ダニエル書 1

1-2 エホヤキム王がユダを治めるようになって三年後、バビロンの王ネブカデネザルが大軍を率いて、エルサレムに攻めて来ました。 神様はネブカデネザル王に勝利をお与えになりました。 バビロンへ帰る時、王は、神殿から聖なる器具を持ち出し、シヌアルにある自分の神の宝物倉に納めました。 3-4 ネブカデネザル王は、宮殿の人事担当者アシュペナズに命じて、捕囚として連れて来たユダヤ人の若者の中から、ユダの王族か貴族の出身者数人を選び、カルデヤ人のことばと文学を教えるようにさせました。 王はこう命じたのです。 「いろいろの分野の知識に通じ、知恵にすぐれ、鋭敏な上に良識を備え、宮廷に仕えるにふさわしい身だしなみがあり、身体剛健で容姿端麗な若者を選び出せ。」 5 王はこの若者たちに、三年間の訓練期間中、王自身の料理場から最上の食物とぶどう酒をあてがいました。 訓練ののち、この若者たちを、王の参議官に取り立てようとする特別な計らいだったのです。 6 こうして選ばれた若者の中に、ダニエル、ハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤの四人がいました。 四人ともユダ部族の出身でした。 7 ところで、彼らの監督官は、それぞれにバビロニヤ名を与えました。 それで、ダニエルはベルテシャツァル、ハナヌヤはシャデラク、ミシャエルはメシャク、アザルヤはアベデ・ネゴと呼ばれました。 8 しかし、ダニエルは、王の支給する食物〔ユダヤの法律で禁止されていた豚などが含まれていたと思われる〕もぶどう酒も断じて口にしない、と決心したのです。 それで、ほかの食事をとることができるよう、その許可を監督官に願い出ました。 9 すると神様は、この監督官に、ダニエルを特別に配慮し、その苦しい立場を思いやる心をお与えになりました。 10 それでも彼は、ダニエルの申し出には頭を痛めました。 監督官は恐る恐る言いました。 「ほかの同輩の若者と比べて、あなたがたの顔が青白く、やせ細ってしまったら、どうなるだろう。 職務怠慢のかどで、首を切られるかもしれない。」 11 そこでダニエルは、監督官が彼ら四人につけてくれた世話役と、このことについて話し合い、 12 ともかく、十日間、野菜中心の食事をさせてくれるように頼みました。 13 その試験期間が終わった段階で、王のごちそうを食べた者たちと比較して、野菜中心の食事を継続するかどうかを決める、ということにしたのです。 14 世話役は、ついにこの試験期間を実施することに踏み切りました。 15 さて、十日が過ぎました。 ダニエルとその三人の友人は、王のごちそうを食べた若者たちよりも健康そうで、栄養が十分なように見えます。 16 そこで世話役は、それからも、ごちそうやぶどう酒抜きの、野菜中心の食事をダニエルたちに与えました。 17…

ダニエル書 2

1 ネブカデネザル王の治世第二年のある夜、王は恐ろしい悪夢にうなされ、震えおののきながら目を覚ましました。 2 王は直ちに呪法師、呪文師、呪術師、占星学者を呼び寄せて、その夢を解き明かせと要求したのです。 3 一同が召し出されると、王はこう言いました。 「余は恐ろしい悪夢にうなされたのだが、何か不吉な予感がしてならんのだ。 余の見た夢を説明してくれんか。」 4 そこで占星学者たちは、アラム語で王に申しました。 「陛下、まず、どんな夢かをお教えください。 そうすれば、その意味を解き明かしてご覧に入れます。」 5 「いま言ったではないか。 どんな夢か、思い出せんのだ。 どんな夢で、それがどんな意味か説明することができないなら、おまえたちの手足をばらばらにし、おまえたちの家をごみの山としてくれよう。 6 しかし、夢とその意味を説明してくれたなら、たくさんの褒美を取らせ、栄誉も与えよう。 さあ、教えてくれ。」 7 「おことばですが、まずその夢をお教えくださらないことには、意味を解き明かせないのです。」 8-9 「おまえたちの魂胆はわかったぞ。 悪夢の示す災いが余に降りかかるまで、時間をかせごうというのだろう。 どんな夢かもわからないくらいなら、おまえたちの解き明かしなど、信じられるかっ!」 10 「人の見た夢をあてる者など、地上にはおりません! また、そんな、むちゃなことをお尋ねになる王様も、世界にはおりません! 11 陛下は、できないことをしろとおっしゃるのです。 神々ならぬ人間には、だれも陛下のご覧になった夢はわかりません。 それができる神々は、ここにはおられないのです。」 12 これを聞いた王は、かんかんに怒り、「バビロンの知者を一人残らず死刑にせよ」と命じました。 13 ダニエルと三人の仲間も、他の知者たちといっしょに殺されることになりました。 14 しかし、死刑執行の責任者アルヨクが姿を現わした時、ダニエルは、この時とばかり、知恵の限りを尽くして話し合いました。 15 「なぜ、陛下はそんなにご立腹なのですか。 いったい、何があったのですか。」 そこでアルヨクは、事の次第を説明しました。 16…

ダニエル書 3

1 ネブカデネザル王は、高さ三十メートル、幅三メートルもある金の像を造り、それをバビロン州のドラの平野に立てました。 2 それから、命令を発して、すべての君主、長官、総督、参議官、財務官、司法官、保安官および各州の知事たちを召集し、その像の除幕式に出席させることにしました。 3-4 この指導者たちが全員出席して像の前に立つと、伝令官が大声で叫びました。 「諸国、諸国語の皆様。 陛下のご命令です。 5 楽隊の奏楽と同時に、地にひれ伏して、陛下がお立てになった金の像を拝みなさい。 6 命令に従わない者は、直ちに火の燃える炉に投げ込まれます。」 7 それで、楽隊の奏楽が始まると、諸国、諸国語、諸宗教の者たちがいっせいにひれ伏し、金の像を拝みました。 8 ところが、ある役人たちが王のもとへ来て、像を拝まなかったユダヤ人のことを非難しました。 9-11 「陛下。 陛下は、『楽隊の演奏と同時に、全員がひれ伏して、金の像を拝め。 命令に従わない者はだれでも、火の燃える炉に投げ込まれる』という法令をお出しになりました。 12 ところが、陛下がバビロン州の政務担当者に任命なさったシャデラク、メシャク、アベデ・ネゴは、この法令を無視して、陛下の神々に仕えることをせず、陛下がお立てになった金の像を拝まなかったのです。」 13 これを聞いた王は、烈火のように怒り、シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴを引き立てて来るよう命じました。 14 王は三人に問いただしました。 「ああ、シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴ。 おまえたちが余の神々に仕えず、また、余の立てた金の像を拝まなかったというのは、ほんとうか。 15 とにかく、もう一度チャンスを与えよう。 奏楽が始まったら、ひれ伏して像を拝めばよし、さもなければ、直ちに火の燃える炉に投げ込むぞ。 どのような神が、余の手からおまえたちを救い出せるというのか。」 16 シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴは答えました。 「陛下、私たちの身にどんなことが起ころうと、ご心配には及びません。 17 たとい燃えさかる炉に投げ込まれましても、陛下、私たちの神様は、私たちを陛下の手から救い出すことがおできになります。 18 たといそうでなくても、陛下、ご承知ください。 私たちはどんな情況におかれても、決して陛下の神々に仕えたり、金の像を拝んだりはいたしません。」…

ダニエル書 4

1 ネブカデネザル王は、次のような声明文を、当時の世界の諸国、諸国語の民に送りました。 諸国民に告ぐ。 2 いと高き神様が、余に行なわれた不思議なみわざについて、知らせたいと思う。 3 それは信じ難いほどの奇蹟であった。 今こそ、この神様の王国が永遠のものであることを、余ははっきり知った。その神様の支配は永遠に変わらない。 4 余は、平安と繁栄をむさぼりながら生きていた。 5 ところが、ある夜、非常に恐ろしい夢を見た。 6 そこで、バビロン中の知者という知者を集めて、夢の解き明かしをさせることにした。 7 呪法師、占星学者、占い師、天才などと言われる者が、みな集まった。 その席で、余の夢のことを話したが、だれも解き明かせなかった。 8 最後に、ダニエルが来た。 余は自分の神の名にちなんで、彼にベルテシャツァルと名をつけたが、この者には聖なる神の霊が宿っていたのだ。 そこで余は、ダニエルに夢のことを話した。 9 「おお、呪法師の長ベルテシャツァル。 余はおまえのうちに聖なる神の霊が宿っており、どんな秘密も見事に解き明かせるのを知っているぞ。 余の夢の意味を教えてくれ。 10-11 余は野原に立っている大木を見た。 その木は天へ向かってどんどん伸び、ついに世界中の人々が、どこからでも見えるほどになった。 12 葉は青々と茂り、枝にはすべての人が食べても足りるほど、実がたわわになっていた。 野の動物はその木陰にいこい、鳥はその枝を住みかとし、全世界がその木によって養われた。 13 以上のようなことを夢で見ていると、神様の使いの一人が天から降りて来るのが見えた。 14 その御使いはこう叫んだ。 『その木を切り倒し、枝を切り払え。 また、葉を振り落とし、実をまき散らせ。 動物を木陰から、鳥を枝から追い払え。 15 だが、切り株と根は残し、鉄と青銅の鎖をかけて、野の若草の中に置け。 天の露にぬれさせ、野の動物といっしょに草を食べさせるのだ! 16…

ダニエル書 5

1 ベルシャツァル王は、千人の高位高官を招いて大宴会を催し、ふんだんにぶどう酒をふるまいました。 2-4 王は、ぶどう酒を飲みながら、ずっと以前、ネブカデネザル王の治世に、エルサレムの神殿からバビロンに持って来た、金と銀の杯のことを思い出しました。さっそく、この聖なる杯を宴席に持って来るよう命じました。 杯が運ばれて来ると、王と王子たち、妻とそばめたちは、金、銀、青銅、鉄、木、石で作られた偶像のために、その杯で乾杯したのです。 5 すると突然、居並ぶ者たちの目の前で、人の手の指が現われ、燭台の向こうの塗り壁に何か書いたのです。 王も、確かにその指を見ました。 6 恐ろしさのあまり、王の顔は蒼白となり、すっかりおびえて、ひざががくがく震えだし、とうとうその場に座り込んでしまいました。 7 王は叫びました。 「呪文師、占星学者を呼べ。 カルデヤびとを呼べ。 だれか、壁に書かれた文字を読み、その意味を解き明かせるなら、王室の栄誉を帯びた紫の衣を着せ、首に金の鎖をかけ、この国の第三の支配者としようぞ!」 8 しかし、呼び集められた者のうち、一人としてその文字を読み、意味を解き明かせる者はいません。 9 王はますます興奮し、恐怖におびえ、居並ぶ高官たちも、うろたえるばかりです。 10 このことを聞いた王母は、すぐ宴会場に駆けつけ、王に言いました。 「王よ、落ち着きなさい。 そんなお顔をなさったり、おびえたりするのはおやめなさい。 11 あなたの王国には、聖なる神の霊が宿っている人がいるではありませんか。 父上の時代に、その人は、まるで神様のように、知恵と理解力に満ちていました。 父上の治世に、その人は、バビロン全土の呪文師、占星学者、カルデヤびと、占い師たちの長とされたのです。 12 その人は、ダニエルと申します。 父上は彼をベルテシャツァルと呼んでおりました。 その人を召してください。 彼の頭脳は神様の知恵と理解力に満ちています。 それで、夢を解き明かし、なぞを解き、どんな難問も解決できるのです。 あの壁に書かれた文字も、きっと読みこなしてくれましょう。」 13 ダニエルは、すぐさま王のもとに召されました。 王はダニエルに語りかけました。 「ネブカデネザル王がイスラエルから捕虜として連れて来たユダヤ人ダニエルと申すのは、おまえか。 14 おまえのうちには神の霊が宿り、知恵と理解力にすぐれていると聞いている。 15 余の知者や占星学者どもは、あの壁に書かれた文字を読み、その意味を解き明かそうとしたが、できなかった。 16 おまえは、どんな難問も解くことができるそうだな。 この文字を解き明かしてくれるなら、紫の衣を着せ、首に金の鎖をかけ、この国で第三の支配者としてやるが、どうだ。」 17 「ありがたい仰せではございますが、その褒美は、ご自分のために取っておかれるか、だれかほかの者におやりください。 とにかく、壁の文字の意味はお教えします。…

ダニエル書 6

1 ダリヨス王は国を百二十の州に分け、それぞれに知事をおきました。 2 州知事の上に三人の大臣をおき、ダニエルはその一人でした。 この三人に報告するように義務づけることで、王は効果的に王国を治めることができました。 3 ダニエルは、そのすぐれた能力のゆえに、他の大臣や、州知事よりはるかに有能であることが、だれの目にも明らかになりました。 そこで王は、彼を行政長官とし、全帝国を治めさせようとしました。 4 そのため、他の大臣や州知事は激しく嫉妬し、ダニエルの行政に何か落度はないかとあら捜しをし、王に訴える口実を見つけようとしました。 しかし、何一つ批判すべき点を見つけることができません。 ダニエルは誠実で、正直に振る舞い、まちがいを犯すことがありませんでした。 5 そこで、「残された道はただ一つ。 ダニエルの宗教を突くことだ」ということになったのです。 6 彼らは、申し合わせて王のもとへ行き、次のように進言しました。 「ダリヨス王よ。 いつまでもご健勝であられますように。 7 私ども大臣、州知事、参議官ならびに総督は、どんな事情があっても取り消すことのできない法令を陛下に制定していただくよう、全会一致で決議いたしました。 その法令とは、向こう三十日間、陛下以外の者に、どんな神にも人にも祈りをささげる者があれば、ライオンの餌食にされる、という内容のものでございます。 8 この法令に署名をお願いいたします。 そうすることで、これは無効にすることも、変更することもできないものになります。 まさに、取り消しのできない『メディヤとペルシヤの法律』となるのでございます。」 9 そこで王は、この法律に署名したのです。 10 ところで、ダニエルはそのことを知りましたが、家に帰ると、いつものように二階の寝室に入り、ひざまずきました。 エルサレムの方角の窓を開けたまま、彼は一日に三度、祈りをし、感謝をささげていたのです。 11 すると、陰謀を企てた連中がダニエルの家に押しかけ、神様に哀願し、ひたすら祈っているダニエルの姿を見つけました。 12 彼らは王のもとに急ぎ、あの法律について念を押してから、こう言いました。 「陛下。 陛下は、向こう三十日間、陛下以外の者に、どんな神にも人にも祈りをささげてはならないという法律に、署名なさいました。 また、その法律には、背く者はライオンの餌食にされる、ともございました。」 「いかにも、そのとおりだ。 変更も取り消しもできない『メディヤとペルシヤの法律』だ。」 13 そこで彼らは、王に訴えました。 「あのユダヤ人捕虜の一人、ダニエルは、陛下をも、陛下の法律をも無視して、日に三度、彼の神に祈りをささげているのです。」 14 これを聞いて、王は法律に署名したことを悔やみ、何とかしてダニエルを助けようとしました。 その日が暮れるまで、ダニエルを救い出す手だてはないものか、と思いめぐらしていました。 15…

ダニエル書 7

1 バビロン帝国の王ベルシャツァルの治世元年のことです。 ダニエルは夢を見、それを書き留めました。 夢は次のようなものです。 2 「大海に激しい嵐が起こり、強風が四方から吹きまくっていました。 3 すると、四頭の巨大な動物が海から上がって来たのです。四頭とも、みな別の動物でした。 4 第一の動物はライオンのようで、わしの翼をつけています。 よく見ると、その翼はもぎ取られて、もう飛べなくなっており、人間のように地上に二本足で立ち、人間の心まで与えられているのです。 5 第二の動物は熊のようで、横ざまに寝ていました。 牙の間に、肋骨を三本くわえています。 すると、それに向かって、『起き上がれ! 大ぜいの人を食らえ!』と命じる声がしました。 6 第三の奇妙な動物は、ひょうの格好をしていました。 背中には鳥の翼があり、さらに四つの頭があります。 しかも、この動物に、全人類を治める偉大な権力が与えられているのです。 7 さらに、目をこらして見ていると、第四の動物が海から姿を現わしました。 その形相の恐ろしさは、とうていことばに表わせません。 また、その強さは信じられないほどです。 巨大な鉄の牙で、餌食になった者を食い裂き、ほかの者を足で踏みつぶしてしまいました。 この第四の動物は、前に現われた動物よりはるかに荒々しく、残忍な性格で、十本の角を持っていました。 8 その角を注意して見ていると、突然、角の間から別に一本の小さな角が出て来ました。 そのために、最初の十本の角のうち三本が根こそぎ引き抜かれてしまいました。 この小さな角には、人間の目と、大言壮語する口がついていました。 9 続けてよく見ていると、幾つかの王座が備えられ、全能の神様が、審判のため、その座にお着きになりました。 その衣は雪のように白く、髪の毛は純白の羊毛のようでした。 燃える車輪で運ばれて来た火の王座に、神様は座りました。 10 神様の前からは火の川が流れ出ていました。 何百万の御使いが神様に仕えており、何億という人が神様の前に立たされて、さばきを待っていました。 それから法廷が開かれ、幾つかの記録文書がひもとかれたのです。 11 さらに、よく見ていると、あの残忍な第四の動物が殺され、体を焼かれてしまいました。 全能の神様に対して尊大に振る舞い、その小さな角を誇っていたからです。 12 残りの三頭の動物は、王国を召し上げられたものの、しばらくは生きのびることを許されました。 13 次に、人のように見えるものが、天の雲に乗って来るのが見えました。 その方は、神様の前に導かれました。 14 その方は、世界の国々を治める権威と栄光とを与えられていました。 それで、どの国民もみな、この方に聞き従うようになりました。 この方の権威は永遠で、決して終わることがありません。 その国は滅びることがないのです。 15 私は夢で見たことによって、すっかり混乱し、動揺しました。…

ダニエル書 8

1 ベルシャツァル王の治世の第三年に、私は最初の夢と同じような、もう一つの夢を見ました。 2 その夢の中で、私はエラム州の首都シュシャンにいました。 よく見ると、私はウライ川のほとりに立っているではありませんか。 3 あたりを見回すと、川岸に二本の長い角を持った雄羊が立っていました。 よく見ると、一本の角が伸び始め、もう一本の角より長くなりました。 4 この雄羊は、道をふさぐものを片っぱしから突きのけて進みました。 だれも立ち向かえず、被害者を助けることもできません。 雄羊は思いのままに振る舞い、ますます尊大になっていきました。 5 これはどうしたことかといぶかっていると、突然、一頭の雄やぎが、地を飛ぶように早く、西方から姿を現わしました。 この雄やぎには、目と目の間に一本の大きな角がありました。 6 そして、二本の角がある雄羊に向かって猛烈な勢いで突進して行きました。 7 雄羊に近づくと、ますます怒り狂い、激しくぶつかって、二本の角をへし折ってしまいました。 雄羊はどうすることもできず、雄やぎに打ち倒され、踏みつけられるままでした。 雄羊を救い出そうとするものは、どこにもいなかったからです。 8 勝利者となった雄やぎは高慢になり、強大な力を誇るようになりましたが、突然、その権力の絶頂で、大きな角がへし折られました。 すると、その折れた所に、四方に伸びた四本の角が生えてきたのです。 9 そのうちの一本は、初めは伸びるのが遅かったのですが、そこから小さな角が生え、やがて非常に強くなり、南と東とを攻撃し、イスラエルに戦いをいどみました。 10 彼は神様の国民と戦って、その指導者たちの幾人かを打ち倒しました。 11 そればかりか、天の軍勢の主にさえ挑戦して、その方に毎日ささげられるいけにえを取り上げ、その神殿を汚したのです。 12 それでも、天の軍勢は、このような悪行にとどめを刺すことを禁じられていました。 その結果、真理と正義は姿を消し、悪が我が物顔に振る舞っていたのです。 13 それから私は、聖なる御使い二人が話し合っているのを耳にしました。 一人が次のように尋ねました。 「以前のように、毎日いけにえをささげることができるようになるのは、いつの日のことだろうか。 神殿が破壊されたことに復讐し、神様の国民が勝利を得るのは、いつの日だろうか。」 14 もう一人が答えました。 「二千三百日が過ぎてからだ。」 15 この幻の意味を知ろうと思いめぐらしていると、突然、目の前に、人のように見える方が立ったのです。…

ダニエル書 9

1 今や時が過ぎて、アハシュエロスの子ダリヨス王の治世の第一年となりました。 ダリヨスはメディヤ人でしたが、カルデヤ人の王となったのです。 2 このダリヨス王の治世の第一年に、私、ダニエルは、預言者エレミヤの書から、エルサレムが七十年のあいだ荒廃したままである、ということを知りました。 3-4 そこで神様に、〔捕囚を終わらせ、祖国に帰してくださいと〕真剣にお願いしました。 断食をし、荒布を着、灰をかぶり、自分の罪や同胞の罪を告白して、祈り求めました。 「ああ神様。 神様は大いなる恐るべきお方です。 神様を愛し、神様のおきてを守る者には、恵みによる約束を必ずお果たしになります。 5 私たちは多くの罪を犯しました。 神様に反逆し、ご命令を無視しました。 6 また、神様のしもべである預言者の言うことを聞きませんでした。 神様が長年にわたり、再三再四、しもべである預言者を遣わして、王や指導者、また、全国民にお告げを示してくださったのに、その声に耳を傾けませんでした。 7 ああ神様。 神様は正しいお方です。 それなのに、私たちは相も変わらず、いつも罪を犯し、恥ずかしい生き方をしています。 ユダの国民も、エルサレムの住民も、神様に対する不真実のゆえに散らされました。 近くに、あるいは遠くにいるイスラエル人も、みなそうなのです。 8 ああ神様。 私たちも、私たちの王、指導者、先祖も、そのあらゆる罪のゆえに、いやと言うほど恥をかかせられるのです。 9 ところで、神様はあわれみに満ちたお方で、反逆した者をもお赦しになります。 10 ああ神様。 私たちは不従順で、神様が預言者をとおしてお与えになったすべてのおきてを、鼻であしらうようなことをしました。 11 イスラエル人はみな、不従順の罪を犯しました。 神様から離れ、御声を聞きませんでした。 それで、神様のしもべモーセの法律に書かれている恐ろしいのろいが、私たちを押しつぶしてしまったのです。 12 神様は、警告どおりのことを行なわれました。 エルサレムで、私たちや指導者たちに降りかかったこのような惨事は、これまでの歴史で一度も見たことがありません。 13 私たちへののろいは、モーセの法律に書かれているのですが、みなそのとおりになったのです。 モーセが予告していた不幸なことが、みな現実となったのです。 それでもなお、私たちは罪を捨て、正しいことをして、神様の期待にこたえようとしなかったのです。 14 そこで神様は、用意しておられた災難を下して、私たちを押しつぶしてしまわれました。 神様が行なわれたことはすべて正しいのに、私たちは従おうとしませんでした。 15 神様。 神様は、偉大な御力を現わして、エジプトからご自分の国民を導き出し、その御名の限りなくすばらしいことをお示しになりました。 神様、もう一度、そうしてください。 私たちは多くの罪を犯し、悪を行なっています。…

ダニエル書 10

1 ペルシヤの王クロスの治世の第三年に、ベルテシャツァルとも呼ばれたダニエルは、もう一つの幻を見ました。 それは、いつか必ず起こる出来事についてでした。 すなわち、打ち続く戦争や悲惨による激しい苦難の時代のことでした。 この時ダニエルは、その幻の意味を悟ることができました。 2 〔ダニエルは後に、このように言ったのです。〕 この幻を見た時、私はまる三週間、喪に服していました。 3 その間ずっと、ぶどう酒も肉も口にせず、もちろん、茶菓も手にすることはありませんでした。 体を洗ったり、ひげを剃ったり、髪を梳くこともしませんでした。 4 四月初旬のある日、私はティグリス川のほとりに立っていました。 5-6 と、突然、目の前に、リンネルの衣服をまとい、腰に純金の帯を締め、光り輝くような肌をした方が立っているのが見えたのです。 その顔からは、いなずまのように、目もくらむばかりの閃光がきらめいています。 目は燃える火の池のようであり、腕と足は磨き上げた真鍮のように輝き、その声は大群衆の叫びのようです。 7 この圧倒されるような幻を見たのは、私だけでした。 いっしょにいた者たちは何も見なかったのに、突然、異常な恐怖に取りつかれ、逃げるように身を隠してしまい、 8 私だけが残ったのです。 この恐ろしい幻を見て、私はすっかり力が抜け、恐怖のあまり顔色も青ざめてしまいました。 9 それから、その方が語りかけましたが、私は意識を失い、うつぶせに地面に倒れてしまいました。 10 すると、一つの手が、手も膝もがくがく震えている私を起こしてくれました。 11 その時、その方の声が聞こえました。 「さあ、だれよりも神様に愛されているダニエルよ、立ちなさい。 これから語ることを、よく聞くがいい。 神様が私を、あなたのところへ、お遣わしになったのだ。」 そこで私は、まだ恐怖で震えながらも、立ち上がりました。 12 その方は続けました。 「ダニエル、恐れることはないぞ。 あなたが神様の御前で断食し、幻の意味を悟ることができるように祈り求めた最初の日に、あなたの願いは天において聞かれ、すでに答えられているからだ。 その日に、私はあなたに会うため、ここに遣わされていたのだ。 13 ところが、二十一日間も、ペルシヤを支配する巨大な悪の霊が、行く手に立ちふさがっていた。 その時、天の軍勢の最高指揮官の一人ミカエルが助けに来てくれたので、私はペルシヤの霊的支配者を打ち破ることができたのだ。 14 いま私は、終わりの時に、あなたの同胞であるユダヤ人に起こることを知らせるために、ここに来ている。 もっとも、この預言の実現はまだ何年も先のことだ。」 15 このことばを聞いている間ずっと、私はうつむいて、ひと言もしゃべることはできませんでした。 16 ちょうどその時、人の姿をした方がくちびるに触れてくれました。 すると、再び話せるようになり、天から遣わされた方に申しました。 「主よ。 私はあなた様の出現に恐れおののき、力も抜けてしまいました。…