ヨハネによる福音書 1

1-2 まだ何もない時、キリストは神と共におられました。 キリストは、いつの時代にも生きておられます。 キリストは神なのです。 3 このキリストが、すべてのものをお造りになりました。 そうでないものは一つもありません。 4 キリストには永遠のいのちがあります。 全人類に光を与えるいのちです。 5 そのいのちは、暗やみの中でさんぜんと輝き、どんな暗やみも、この光を消すことはできません。 6-7 イエス・キリストこそほんとうの光です。 このことを証言させるために、神はバプテスマのヨハネをお遣わしになりました。 8 ヨハネ自身は光ではなく、ただその光を指し示す証人にすぎません。 9 後に、ほんとうの光である方が来て、全世界の人々を照らしてくださったのです。 10 ところが、世界を造った方が来られたというのに、だれもこの方に気づきませんでした。 11-12 自分の国にいながら、自分の民のユダヤ人にさえ、受け入れてはもらえなかったのです。 この方を心から喜び迎えたのは、ほんのわずかな人にすぎません。 しかし、受け入れた人はみな、この方から、神の子供となる特権をいただきました。 それにはただ、この方が救ってくださると信じればよかったのです。 13 信じる人はだれでも、新しく生まれ変わります。 神が、そう望まれたのです。 人間の熱意や計画は全く関係ありません。 14 キリストは人間となり、この地上で私たちと共に生活なさいました。 彼は恵みと真実の方でした。 私たちはこの方の栄光を目のあたりにしました。 それは天の父のひとり子としての栄光でした。 15 ヨハネは人々にキリストを紹介しました。 「私が今まで、『まもなく来られる方は、私よりはるかに偉大な方だ。 私が生まれるずっと前からおられたからだ』と口をすっぱくして言ってきたのは、まさにこの方のことなのだ。」 16 この方の恵みは尽きるところを知りません。 私たちはみな、次から次へと、あふれるばかりに恵みをいただきました。 17 モーセはきびしい命令と、情け容赦もない法律とを与えただけでしたが、イエス・キリストはその上に、愛に満ちた赦しの道を備えてくださったからです。 18 いまだかつて、実際に神を見た人はいません。 しかしもちろん、神のひとり子だけは別です。 御子は、父なる神といつもいっしょですから、神について知っていることは、何でも教えてくださったのです。…

ヨハネによる福音書 2

1 それから三日目に、ガリラヤのカナという村で結婚式があり、イエスの母マリヤは、客として出席しました。 2 イエスと弟子たちも招待されました。 3 ところが、宴会の最中だというのに、ぶどう酒が切れてしまったのです。 マリヤは、そのことをイエスに知らせました。 4 イエスは、「今はだめですよ、お母さん。 まだ、奇蹟を行なう時ではありませんから」と、お答えになりました。 5 しかし、マリヤは手伝いの者たちに、「この人の言いつけどおりになさってね」と申し渡しました。 6 さてそこには、石の水がめが六つありました。 ユダヤ教の儀式に使う水がめで、それぞれ八十リットルから百二十リットルぐらい入るものです。 7 イエスは手伝いの者たちに、「さあ、縁までいっぱい水を入れなさい」と指示なさいました。 彼らがそのとおりにすると、 8 「いいでしょう。 では今度は、それを汲んで、宴会の世話役のところへ持って行きなさい」と言われました。 彼らは、言われるままに持って行きました。 9 宴会の世話役が試しに一口味わってみると、おいしいぶどう酒です。 「こんな上等の酒を、いったいどこから出してきたんだろう」と首をかしげました。 〔もちろん手伝いの者たちは何もかも知っています。〕そこで、花婿を呼び出して、 10 言いました。 「これは極上のぶどう酒じゃないですか。 あなたは並みの方じゃありませんね。 たいていどこの家でも、初めに良いぶどう酒を出し、酔いがまわって味がわからなくなると、安物でごまかすものですよ。 ところがあなたは、一番上等なものを、最後まで取っておかれたんですからね。」 11 このガリラヤのカナでの奇蹟は、イエスが神の力を公に示された最初のものでした。 これを見て、弟子たちは、「イエス様は正真正銘のメシヤ(救い主)だ」と信じたのです。 12 その結婚式のあと、イエスは、母や兄弟、弟子たちといっしょにカペナウムへ行き、数日間、滞在されました。 イエス、エルサレム神殿をきよめる 13 ユダヤ人の過越の祭りが近づき、イエスはエルサレムへ行かれました。 14 そして、宮の境内で、供え物用の牛、羊、鳩を売る商人たちや、勘定台を前にどっかと座り込んでいる両替人たちをごらんになりました。…

ヨハネによる福音書 3

1-2 とっぷり日も暮れたある夜のこと、パリサイ人で、ニコデモという名のユダヤ人の指導者が、イエスに会いに来ました。 「先生。 だれもみな、あなた様が神様から遣わされた教師であることを存じ上げております。 あなた様のなさる奇蹟を見ればもう、わかりきったことでございます。」 3 「そうですか。 でもよく言っておきますが、あなたはもう一度生まれ直さなければ、絶対に神の国へは入れません。」 4 ニコデモは、思わず大声で叫びました。 「ええっ、もう一度生まれるのですか! いったい、どういうことですか。 年をとった人間が母親の胎内に戻って、もう一度生まれるんですか。 そんなこと、できっこありませんよ。」 5 「よく言っておきますが、だれでも水と御霊によって生まれなければ、神の国へは入れません。 6 人間からは人間のいのちが生まれるだけです。 けれども聖霊は、天からの、全く新しいいのちを下さるのです。 7 もう一度生まれなければならない、と言われたからといって、驚くことはありません。 8 風は、音が聞こえるだけで、どこから吹いて来るかも、どこへ行くのかもわかりません。 御霊だって同じことです。 次はだれに、この天からのいのちが与えられるか、まるでわからないのです。」 9 「それはいったい、どういうことで?」 10 「あなたはみんなに尊敬されているユダヤ人の教師ではありませんか。 このようなこともわからないのですか……。 11 わたしは知っていること、見たことだけを話しているのです。 それなのに、あなたがたは信じてくれません。 12 人間の世界で現に起こっていることなのですよ。 それも信じられないくらいなら、天で起こることなど、話したところで、とても信じられないでしょう。 13 メシヤ(救い主)のわたしだけが、この地上に下って来て、また天に帰るのです。 14 モーセが荒野で、青銅で作った蛇を、さおの先に掲げたように、わたしも木の上に上げられなければなりません。 15 わたしを信じる人はだれでも、永遠のいのちを持つためです。」 16 実に神は、ひとり子をさえ惜しまず与えるほどに、世を愛してくださいました。 それは、神の御子を信じる者が、だれ一人滅びず、永遠のいのちを得るためです。…

ヨハネによる福音書 4

1 さて、イエスのところには、ぞくぞくと人々が詰めかけ、バプテスマ(洗礼)を受けて弟子になり、その数はヨハネよりも多いといううわさが、パリサイ人たちの耳に入りました。 イエスはこのことを知ると、 2 ――もっとも、実際にバプテスマを授けていたのは、イエス自身ではなく、弟子たちでしたが、―― 3 ユダヤをお去りになり、またガリラヤ地方へ行かれました。 4 その途中で、どうしてもサマリヤをお通りにならなければなりません。 5-6 サマリヤのスカルという村にさしかかられたのは、ちょうど正午ごろでした。 そこに、昔ヤコブが息子ヨセフに与えた土地があり、ヤコブの井戸がありました。 日のかんかん照りつける長い道のりを歩いて来られたイエスは、疲れ果て、井戸のそばにぐったり腰をおろされました。 7 まもなく、サマリヤ人の女が一人、水を汲みに来ました。 イエスは、「すみませんが、水を一杯下さい」と声をおかけになりました。 8 そのとき弟子たちは、村へ食べ物を買いに行っており、ほかにはだれもいません。 9 女はびっくりしたようです。 「あれまあ、あんたユダヤ人じゃないのさ。 あたしはサマリヤ人だよ。 なのにどうして、水をくれなんて頼むのさ。」〔当時、ユダヤ人はサマリヤ人を見下し、口をきこうとさえしなかったのです。〕 10 「もし、神があなたに、どんなにすばらしい贈り物を用意しておられるか、また、わたしがだれかを知ってさえいたら、あなたのほうから、いのちの水をくださいと願ったでしょう。」 11 「そんなこと言ったって、あんたは水を汲むおけも綱も持ってないじゃないか。 この井戸はとても深いんだよ。 そのいのちの水を、いったいどっから汲むのさ。 12 あんたは、あたしたちのご先祖ヤコブ様よりも偉いってのかい。 ヤコブ様はこの井戸をあたしたちにくれたんだよ。 ヤコブ様も、その子孫も、家畜もみんな、この井戸の水を喜んで飲んだんだ。 これよりいい水をくれるってのかい。」 13 「この水を飲んでも、すぐにまた、のどが渇きます。 14 けれども、わたしがあげる水を飲めば、絶対に渇くことはありません。 わたしがあげる水は、それを飲む人のうちで、永久にかれない泉となり、いつまでも、その人を永遠のいのちで潤すからです。」 15 「先生。 その水をあたしに下さいよ。 そうすりゃ、のども渇かないし、毎日こんな遠くまで、てくてく歩いてさ、水汲みに来なくてすむもの。」 16 「帰って、夫を連れて来なさい。」…

ヨハネによる福音書 5

1 その後、ユダヤ人の祭りがあったので、イエスはエルサレムに戻られました。 2 エルサレム市内には、羊の門の近くに、ベテスダという池がありました。 池の回りには、屋根つきの五つの廊下があります。 3 そこに、足の不自由な人、盲人、手足の麻痺した人など、大ぜいの病人が横たわっていました。 〔この人たちは、水面が揺れ動くのを待っていたのです。 4 というのは、時たま主の使いが来て、水をかき回すことがあり、その時、最初に池に入った人は、病気が治ったからです。〕 5 その中に、三十八年間も病気で苦しんでいる男がいました。 6 イエスはこの男をごらんになり、長い間どんなに苦しんできたかを知って、「よくなりたいですか」とお尋ねになりました。 7 「もうあきらめてますよ。 せっかく水が動いても、だれも池に入れてはくれないんだから。 何とかして行こうとしている間に、いつでもほかの人が先に入っちゃうんでね。」 8 「さあ、立って、床をたたんで家に帰りなさい。」 9 イエスがこう言われると、たちまち病気は治りました。 男はすぐに床をたたみ、歩きだしたのです。 ところが、この奇蹟が行なわれたのが安息日だったので、 10 ユダヤ人の指導者たちはひどく腹を立て、その男をしかりつけました。「安息日に仕事をするとはけしからん。 床を運んだりするのは、おきて違反だっ!」 11 「でも……、私を治してくださった方が、そうしろとおっしゃったんですよ。」 12 「そんなことを言ったのはどこのどいつだっ!」彼らは問い詰めましたが、 13 男には、だれかわかりません。 イエスはすでに、人ごみに姿を消しておられたからです。 14 しばらくして、イエスは宮でその男を見つけ、声をおかけになりました。 「どうですか、すっかりよくなったでしょう。 もう前のように罪を犯してはいけませんよ。 そうでないと、もっとひどい目に会うかもしれませんから。」 15…

ヨハネによる福音書 6

1 その後、イエスはテベリヤ湖とも呼ばれるガリラヤ湖の向こう岸に行かれました。 2-5 大ぜいの群衆が、どこまでもあとについて行きました。 イエスが病人を治されるのを見たからです。 人々の多くは、年一度の過越の祭りのため、エルサレムへ行く途中でした。 イエスが丘に登り、弟子たちといっしょに腰をおろされると、大ぜいの群衆も、追いかけるように、あとからあとから丘に登って来ます。 その様子をながめながら、イエスはピリポにお尋ねになりました。「ピリポ。 この人たち全部に食べさせるには、どこからパンを買ってきたらいいでしょうか。」 6 もっとも、これは、ピリポを試しただけで、どうするかは、もうとっくに決めておられたのです。 7 ピリポは、「こんなに大ぜいじゃ、ひと財産あっても、まだ足りないでしょうね」と答えました。 8 シモン・ペテロの兄弟アンデレが口をはさみました。 9 「この子が、大麦のパンを五つと魚を二匹持ってますよ。 でもなあ、こんなに大ぜいじゃ、焼け石に水かな?」 10 イエスは、「さあ、みんなを座らせなさい」とお命じになりました。 男だけでも五千人はいたでしょうか。 それが全員、草の生えた斜面に、どやどや腰をおろしました。 11 そこで、イエスはパンを取り、神に感謝の祈りをささげてから、人々にお配りになりました。 また魚も同様になさいました。 みんなほしいだけ食べて、お腹はいっぱいです。 12 イエスは弟子たちに言われました。 「さあ、少しもむだにしないよう、パンくずを集めなさい。」 13 残り物を集めると、なんと十二のかごにいっぱいです。 14 それを見た人々は、どんなにすばらしい奇蹟が起こったのか初めて気づき、口々に、「この方こそ、待ちに待ったあの預言者様だっ! 絶対にまちがいない!」と叫びました。 15 人々は熱狂して、むりやりにでも、イエスを王にまつり上げかねない勢いです。 イエスはそっと抜け出し、ただ一人、山に登って行かれました。 16 その日の夕方、弟子たちは湖の岸辺に降りて行きました。 17 もう暗くなったのに、イエスはまだ戻られません。 そこで舟に乗り込み、カペナウムに向けて湖を渡り始めました。…

ヨハネによる福音書 7

1 このあと、イエスはガリラヤに行かれ、村から村を巡回なさいました。 ユダヤ人の指導者たちが命をつけねらっていたので、ユダヤ以外の地に身を避けようと思われたからです。 2 そうこうするうち、ユダヤの年ごとの祭りである仮庵の祭りが近づきました。 3 イエスの弟たちは、祭りのためにユダヤへ行くよう、しきりに勧めました。「もっと大ぜいの人が奇蹟を見てくれるような所へ行ったらどうだい。 4 こんな所でくすぶってても有名にはなれないよ。 兄さんがそんなに偉いんだったら、世間の人に証明してみせなくっちゃ」と、半ばあざけるように言いました。 5 弟たちでさえ、イエスを信じていなかったのです。 6 「今はまだ、その時ではありません。 しかし、あなたがたはいつ行ってもいいし、いつ行こうが、別にかまいません。 7 世間の人に憎まれるはずもありませんから。 だが、わたしは憎まれています。 彼らの痛いところを突くからです。 8 いいから、あなたがただけで行きなさい。 わたしは、行く時が来たら行きますから。」 9 こう言って、イエスはガリラヤに残っておられました。 10 しかし、弟たちが出かけたあと、人目を忍んでこっそりお出かけになったのです。 11 ユダヤ人の指導者たちは、祭りの間にイエスを見つけ出してやろうと思い、「だれかイエスを見かけた者はいないか」と、やっきになって尋ね回りました。 12 確かに、イエスのことはいろいろ話題になりました。 「あの方はすばらしい方だ」とほめる者もいれば、「いや、違う。 とんだ食わせ物だ」と非難する者もいます。 13 しかし、だれも指導者たちの仕返しを恐れ、表立ってうわさするほど大胆な人はいませんでした。 14 祭りも半ばになったころ、イエスは宮へ行き、おおっぴらに教え始められました。 15 それを聞いたユダヤ人の指導者たちは驚いて、「こいつは、一度も学校で学んだことがないくせに、どうして、こんなに深い知識を持ってるんだろう!」と言い合いました。…

ヨハネによる福音書 8

1 さて、イエスはオリーブ山に戻られましたが、 2 翌朝早く、また宮にお出かけになりました。 たちまち人々が押しかけ、黒山の人だかりです。 イエスはゆっくり腰をおろし、話し始められました。 3 その最中に、ユダヤ人の指導者やパリサイ人が、寄ってたかって、一人の女を引っ立てて来ます。 彼らは、あっけにとられて見つめる人々の目の前に、女を突き出しました。 4 「先生。 この女を見てください。 不倫の現場でつかまったんですよ。 5 モーセの法律では、こういう不届き者は石で打ち殺すことになってますが、どうしたものでしょう。」 6 こう言ったのは、何かことばじりをとらえて、訴えてやろうという魂胆があったからです。 ところがイエスは、体をかがめ、指で地面に何か書いておられるだけです。 7 けれども、彼らは引き下がりません。 あくまで質問を続けます。 そこで、イエスは、ゆっくり体を起こし、「わかりました。 この女を石で打ち殺しなさい。 しかしいいですか。 最初に石を投げるのは、今まで、一度も、罪を犯したことのない者ですよ」と言われました。 8 そして、すぐにまた体をかがめ、地面に何か書きつけられました。 9 すると、ユダヤ人の指導者もパリサイ人も、ばつが悪そうに、年長者から順に一人去り、二人去りして、とうとうイエスと女だけが、群衆の前に取り残されました。 10 イエスは体を起こし、女に言われました。 「はて、あなたを訴えた人たちはどこにいますか。 罰する者は一人もいなかったのですか。」 11 「はい、先生。」 「そうですか。 わたしもあなたを罰しません。 さあ、行きなさい。 もう二度と罪を犯してはいけませんよ。」 世の光であるイエス 12 そのあとで、イエスは人々にお話しになりました。 「わたしは世の光です。 わたしに従って来れば、暗やみでつまずくことはありません。 いのちの光が、あなたがたの進む道をあかあかと照らすからです。」 13 すると、パリサイ人たちがぶつぶつ文句を言いました。 「自慢話もほどほどにしたらどうだい。 うそばかり並べ立てて!」 14 「わたしはありのままを言っているのです。 うそでも、でたらめでもありません。 自分がどこから来てどこへ行くか、よくわかっています。 ところがあなたがたは、全然わかっていません。…

ヨハネによる福音書 9

1 さて、道を歩いていた時のこと、イエスは生まれつきの盲人をごらんになりました。 2 弟子たちが尋ねました。 「先生。 どうしてこの人は、生まれつき目が見えないのです? 本人が罪を犯したからですか。 それとも両親が……?」 3 「いや、そのどちらでもありません。 ただ神の力が現わされるためです。 4 わたしたちはみな、わたしをお遣わしになった方からいただいた仕事を、急いでやり遂げなければなりません。 もうすぐ夜が来ます。 そうしたら、もう仕事はできないのですから。 5 だが、まだこの世にいる間は、わたしは、光を与え続けましょう。」 6 こう言われると、イエスは地面につばをし、泥をこね、それを盲人の目に塗って、 7 言われました。 「さあ、シロアムの池に行って、洗い落としなさい」〔「シロアム」とは、「遣わされた者」の意味〕。 その方が言われたとおりにすると、どうでしょう。 ちゃんと見えるようになって戻って来たではありませんか! 8 近所の人や、彼が盲目のこじきだったことを知っている人はたまげ返り、「これが、あのこじきかい?」と口をそろえて叫びました。 9 こちらで「そうだ」と言えば、「いや、違う」と言う声も聞こえます。 みな、「あいつのはずはない。 だが実によく似てるな!」と思ったのです。 すると当のこじきが、「なに言ってんだい。 おれだよ」と言いました。 10 人々はあっけにとられながらも、「いったい全体どうしたんだい。どうやって見えるようになったんだよ」と矢つぎばやに尋ねました。何が起ったのか知りたくてたまらなかったのです。 11 その男は答えました。 「イエスという方が、泥をこねて、目に塗り、『シロアムの池に行って、泥を洗い落としなさい』と言ったのさ。 それで、そのとおりにすると、見えるようになったんだよ。」 12 「その人は今どこにいるんだい。」 「さあ、知らないな。」 13 人々は、男をパリサイ人たちのところへ連れて行きました。 14 ところで、この日は、たまたま安息日でした。…

ヨハネによる福音書 10

1 「よく言っておきます。 羊の囲いの中に、門から入らないで、柵を乗り越えて忍び込む者は、強盗に違いありません。 2 羊飼いなら、堂々と門から入って来るはずです。 3 門番も羊飼いには門を開けてくれます。 彼の声を聞くと、羊は回りに駆け寄って来ます。 羊飼いは一匹一匹自分の羊の名を呼んで連れ出すのです。 4 先頭に立つのは羊飼い、羊はそのあとについて行きます。 声を知っているからです。 5 知らない人にはついて行きません。 反対に逃げ出します。 聞き覚えのない声だからです。」 6 イエスがこのたとえ話をなさっても、聞いている人々には、どういう意味かさっぱりわかりません。 7 そこで、イエスは説明なさいました。 「いいですか。 わたしが、羊の出入りする門なのです。 8 わたしより前に来た人々はみな、どろぼうか強盗です。 ほんとうの羊は、彼らの言うことは聞きませんでした。 9 そう、わたしは門なのです。 この門から入る者は救われます。 また、安心して出入りができ、緑の牧草を見つけるのです。 10 強盗は、盗んだり、殺したり、滅ぼしたりするために来ます。 しかしわたしが来たのは、いのちを、あふれるほど豊かに与えるためです。 11 わたしはまた、良い羊飼いです。 良い羊飼いは羊のためにはいのちも捨てます。 12 雇い人は、狼が来れば、羊など見向きもせず、自分だけ、すぐに逃げ出します。 羊の持ち主でも、羊飼いでもないからです。 こうして狼は羊にとびかかり、群れを追い散らしてしまうのです。 13 雇い人は、ただ、お金で雇われているだけです。 羊のことを、ほんとうに心にかけているわけではないので、平気で逃げてしまうのです。 14 わたしは良い羊飼いであり、自分の羊を知っています。 また羊もわたしを知っています。 15…