創世記 11

1 そのころ、人類はみな同じことばを話していました。 2 人口がしだいに増えると、人々は東の方に移って行きました。 こうしてバビロンの地に平原を見つけ、大ぜいの人がそこに住みついたのです。 3-4 やがて大都市を建設しようという話が持ち上がりました。 永遠に残る記念碑として、天にも届くような塔の神殿を造り、自分たちの力を見せてやろうというのです。 「こうやって一致団結すれば、あちこちに散らされる心配もなくなるというものだ。」 そう豪語すると、人々はよく焼いた堅いれんがをうずたかく積み上げ、アスファルトを集めてモルタル代わりにしました。 5 神様は降りて来て、人間どもが造っている町と塔をご覧になりました。 6 「いやはや、なんということだ。 同じことばを使い、政治的にも一致して事にあたれば、人間はこれだけの事をやすやすとやり遂げてしまう。 この分だと、あとでどんな事をしでかすか、わかったものじゃない。 何でもやってのけるだろう。 7 こうなったら地上へ降りて行って、彼らが違ったことばを話すようにしてしまおう。 そうすれば、互いに何を言っているかわからなくなる。」 8 こうして、神様は人間を世界の各地に散らしました。 もう都市建設はできません。 9 この都の名がバベル〔「混乱」の意〕と呼ばれたのは、このためです。 つまり、神様がたくさんの国語を与えて人間を混乱させ、各地に広く散らしたのが、このバベルの地だったのです。 10-11 さて、セムの家系に、アルパクシャデという人がいました。 洪水の二年後、セムが百歳のときに生まれた息子です。 セムはそのあとも五百年生き、大ぜいの息子、娘に恵まれました。 12-13 アルパクシャデは三十五歳のとき息子のシェラフをもうけ、そのあと四百三年生きたのですが、ほかにも息子と娘がたくさんいました。 14-15 シェラフは息子のエベルが生まれたとき三十歳でした。 そのあと四百三年生き、大ぜいの息子、娘に恵まれました。 16-17 エベルは息子のペレグが生まれたとき三十四歳で、そのあとも四百三十年生き、息子、娘が大ぜい生まれました。 18-19 ペレグは息子のレウが生まれたとき三十歳で、さらに二百九年生き、息子、娘が大ぜい生まれました。 20-21 レウはセルグが生まれたとき三十二歳で、その後も大ぜいの息子、娘に恵まれて、二百七年生き長らえました。 22-23…

創世記 12

1 父親が死んだ時、神様はアブラムに命じました。 「これから旅に出なさい。 親類縁者も国も捨てて出かけるのだ。 行く先はわたしが教えるから、ただ言われたとおりにすればよい。 2 そうすれば、おまえを偉大な国民の父にしてやろう。 おまえを祝福し、おまえの名を広めて、だれ知らぬ者がないようにしてやろう。 おまえのおかげで、ほかの多くの者も祝福される。 3 わたしは、おまえを祝福する者を祝福し、おまえをのろう者をのろう。 おまえによって、全世界が祝福されるのだ。」 4 アブラムは神様の命令どおり出発しました。 ロトもいっしょです。 その時アブラムは七十五歳でした。 5 妻のサライと甥のロトのほか、カランで得た家畜や奴隷などを連れて旅をし、とうとうカナンに着きました。 6 そのまま旅を続け、シェケムの近くまで来ると、モレの樫の木のそばで野営することにしました。 当時この地方には、カナン人が住んでいたのです。 7 さて神様はアブラムに現われ、「この地をおまえの子孫に与えよう」と約束なさいました。 アブラムが喜んだのは言うまでもありません。 神様とお会いした記念に、さっそくそこに祭壇を築きました。 8 それからさらに南へ向かい、丘陵地帯に来ました。 西のベテルと東のアイにはさまれた地域です。 アブラムは野営をし、神様のために祭壇を築いて祈りました。 9 そのあとまた、時々休みながら、ゆっくり南のネゲブへ旅を続けました。 10 ちょうどそのころ、この地方一帯がひどいききんに見舞われたのです。 何とかしなければなりません。 ひとまずエジプトへ行き、難を逃れることにしました。 11-13 エジプトの国境に近づくと、彼は妻のサライに、人には私の妹だと言ってくれ、と頼みました。「おまえはきれいだからな、エジプト人はきっと目をつけるだろう。 『たいした女だが、亭主がじゃまだ。 やつを殺して女を奪おう』と考えるかもしれない。 だがな、妹ということにしておけば、おまえのことで私を大事にしてくれるだろう。 それで、無事に生きのびることができるじゃないか。」 14 エジプトへ着くと、案の定サライの美しさはうわさの的です。 15 宮殿の役人までが、王の前で彼女のことをほめそやしたので、王はとうとうサライを後宮に召し入れました。 16 おかげでアブラムは、王から羊、牛、ろば、男女の奴隷、らくだなど、たくさんの贈り物をもらいました。 17 しかし、それで事はすみません。 王がサライを召し入れたために、神様は宮廷に、恐ろしい伝染病をはやらせたのです。…

創世記 13

1-2 一行はエジプトを出て北へ向かい、ネゲブまで来ました。 アブラムと妻とロト、それに全財産という一行です。 アブラムは金持ちで、家畜と金銀をたくさん持っていました。 3-4 そこからさらに、北のベテルに向かい、やがて、ベテルとアイにはさまれた、前に野営したことのある所まで来ました。 この前のとき祭壇を築いた場所です。 アブラムは、もう一度ここで神様を礼拝しました。 5 ロトも、羊や牛をはじめ、大ぜいの使用人を持っていて、非常に裕福でした。 6 ところで、たくさんの家畜の群れを持つアブラム家とロト家の両方が住むには、この土地は狭すぎます。 牧草地に比べて家畜の数が多すぎるのです。 7 当然のこと、アブラムの羊飼いとロトの羊飼いとの間に、争いが起きました。 しかも、その地には、カナン人やペリジ人の部族も住んでおり、いつ襲われるかわからない、危険な状態だったのです。 8 アブラムはロトと話し合うことにしました。 「なあ、ロト、お互いの使用人同士のけんかは、なんとしてもやめさせなきゃなるまい。 身内同士でけんかをしても始まらん。 伯父、甥の仲じゃないか。 これからも仲よくやっていくに、こしたことはない。 9 で、こうしようと思うんだが、おまえの意見はどうだ。 まずおまえが、どこでも好きな所を選ぶのだ。 そして、私たちはここで別れる。 おまえが東の方が欲しければ、私はここへ残るし、ここがいいと言うなら、東へ移ることにしよう。」 10 ロトは、ヨルダン川周辺の水に恵まれた肥沃な平野をじーっと見つめました。 まだソドムとゴモラの町が神様に滅ぼされる前だったので、そこは、まるでエデンの園のように見えました。 エジプトやツォアル近辺の美しい田園にも似ています。 11 ロトはその土地を選びました。 東部一帯に広がるヨルダン渓谷の地です。 彼は家畜と使用人を連れ、そこへ行くことにしました。 二人はこうして別れました。 12 アブラムはカナンの地に残り、ロトは平野に下って、ソドムの町の近くに住みついたのです。 13 ただ困ったことに、この地方の住民はひどく質が悪く、神様に背くようなことばかりしていました。 14 ロトが行ってしまうと、神様はアブラムに言いました。 「さあ、四方をぐるっと見渡しなさい。 目の届く限り、遠くまでよく見るのだ。 15 その土地をすべて、おまえとおまえの子孫に与えよう。 16 また、おまえの子孫をふやそう。 砂のように数えきれないほど大ぜいにな。 17 どこへでも出かけて行って、やがておまえのものになる、この新しい土地をよく調べるのだ。」…

創世記 14

1-2 折りも折り、この地方に戦争が起こりました。 シヌアルの王アムラフェル、 エラサルの王アルヨク、 エラムの王ケドルラオメル、 ゴイムの王ティデアルの同盟軍が、 ソドムの王ベラ、 ゴモラの王ビルシャ、 アデマの王シヌアブ、 ツェボイムの王シェムエベル、 のちにツォアルと呼ばれたベラの王の連合軍と戦ったのです。 3 ソドム、ゴモラ、アデマ、ツェボイム、ベラの王たちは、今は塩の海と言われるシディムの谷に全軍を集めました。 4 この五人の王は、十二年間ケドルラオメル王に支配されていたのですが、十三年目に反乱を起こしたのです。 5-6 一年後、ケドルラオメル王の率いる同盟軍が討伐にのり出し、むごたらしい戦いが始まりました。 同盟軍は、 アシュテロテ・カルナイムのレファイム人、 ハムのズジム人、 キルヤタイムの平原にいたエミム人、 セイルの山のホリ人を打ち破り、その勢いをかって、砂漠との境にあるエル・パランまで進軍しました。 7 そこから引き返し、今のカデシュにあたるエン・ミシュパテでアマレク人を破り、さらにハツァツォン・タマルのエモリ人をも負かしました。 8-9 ソドム、ゴモラ、アデマ、ツェボイム、ベラ〔ツォアル〕の連合軍は、ケドルラオメル王の同盟軍に塩の海で戦いをいどんだのですが、敗れてしまいました。 10 そのころ、谷にはアスファルトの穴がいっぱいありました。 退却する時、ソドムの王とゴモラの王はその穴に落ち、残りは山へ逃げ込みました。 11 同盟軍は勝利の余勢をかってソドムとゴモラを略奪し、町中の財産と食糧を洗いざらい奪って、ようようと引き揚げたのです。 12…

創世記 15

1 そののち神様は、幻の中でアブラムに現われ、こう語りかけました。 「アブラムよ、心配することはない。 わたしがおまえを守り、大いに祝福してやろう。」 2-3 「ああ神様、私に息子がないのはご存じでしょう。 それでは、どんなに祝福していただいても、何の役にも立ちません。 息子がいなければ、全財産は一族のだれかほかの者が相続するのです。」 4 「いや、そんなことはない。 ほかの者がおまえの跡継ぎになることは決してない。 おまえの財産を相続する息子が必ず生まれるのだ。」 5 それから神様はアブラムを外へ連れ出し、満天の星空の下に立たせました。 「空を見なさい。 あの星をぜんぶ数えられるか? おまえの子孫はちょうどあの星のようになる。 とても数えきれないほど大ぜいにな。」 6 アブラムは神様を信じました。 神様はその信仰を認め、アブラムを正しい者とみなしました。 7 「カルデヤのウルの町からおまえを導き出したのは、このわたしだ。 それは、この土地を永遠におまえのものとするためだ。」 8 「神様、できれば、その確かな証拠を見せていただけるとうれしいのですが。」 9 すると、次のようにせよと言われました。 それぞれ三歳の雌牛と雌やぎと雄羊、それに山鳩とそのひなを連れて来て、 10 殺し、真ん中から引き裂いて二つに分けよ、というのです。 ただし、鳥は裂いてはいけない、と注意されました。 11 アブラムは言われたとおりにしました。 そして、はげたかが死体の上に舞い下りて来そうになると、追い払うのでした。 12 やがて夕方になり、日が西に沈みかかります。 アブラムは眠くて、どうにも我慢できなくなりました。 何か恐ろしいことが起きる前兆のような、深いやみが忍び寄ってきたのです。 13 その時、神様の声がしました。 「おまえの子孫は四百年のあいだ外国で奴隷にされ、苦しめられるだろう。 14 だが、その国をわたしは罰する。 そしてついには、あり余るほどの富を携えて、彼らはその国から脱出することになるのだ。 15 おまえは天寿を全うし、安らかにこの世を去るだろう。 16 四世代ののち、彼らはこの地に帰る。 今ここに住んでいるエモリ人の国々の悪行は、まだ大したことはない。 だがその時がきたら、きびしい刑罰を受けるのだ。」…

創世記 16

1 神様の約束にもかかわらず、サライとアブラムには、なかなか子供ができません。 そこでサライは、ハガルというエジプト人の召使を、 2-3 アブラムのそばめにしました。 「神様は、いつまでたっても子供を授けてくださらないわ。 こうなったら、あなたが私の召使といっしょになるしかないと思うの。 それで、もし子供が生まれたら、私の子ということにしてくださいな。」 こう言われて、アブラムも同意しました。 カナンの地に来てから、かれこれ十年たっていました。 4 アブラムはハガルといっしょになり、やがて彼女は妊娠しました。 ところが、そのことがわかると、とたんに傲慢になり、女主人のサライに横柄な態度をとるようになったのです。 5 サライはアブラムに食ってかかりました。 「みんなあなたが悪いんですよ。 召使ふぜいにまでばかにされちゃ、私の立場がないわ。いったいだれのおかげで、あなたといっしょになれたと思ってるのかしら。 元はと言えば、あなたのせいよ。 こうなったら、どちらの言い分が正しいか、神様に決めていただきましょう。」 6 「まあまあ、そこまでしなくても、あの娘はおまえの好きなように罰したらいいじゃないか。」 それならと、サライはハガルを気のすむまでいじめ抜きました。 もうとても我慢できません。 ハガルは逃げ出しました。 7 ようやく、シュルへ通じる道路わきにある砂漠の泉のそばまでたどり着いた時、神様の使いが彼女を見つけました。 8 「サライの召使ハガルよ、どこから来て、これからどこへ行くつもりなのだ。」 「女主人のところから逃げ出して来たのです。」 9-12 「それはいけない。 戻って、務めをきちんと果たしなさい。心配はいらない。 おまえの子孫は大きな国になるのだ。 今、おまえのお腹には子供がいるね。 男の子が生まれるから、イシュマエル〔「神は聞いてくださる」の意〕と名づけなさい。 神様はおまえの苦しみを聞き届けられたからだ。 息子は野生のろばのように荒々しく、思うままに振る舞う暴れ者となるだろう。 すべての人を敵に回し、ほかの人たちも彼に敵意をいだく。 彼はまた、親族の者とも敵対するだろう。」 13 そののちハガルは、神様のことを「私を顧みてくださる神様」と呼ぶようになりました。 彼女に現われたのは、実は神様ご自身だったのです。 「私は神様を見たのに死にもせず、こうして、そのことを人に話すこともできるわ」と、彼女は言いました。 14 のちにその井戸は、「私を顧みてくださる生けるお方の井戸」と名がつきました。 それはカデシュとベレデの間にあります。 15 やがて、ハガルはアブラムの子供を産み、アブラムはその子をイシュマエルと名づけました。 16 その時、アブラムは八十六歳でした。

創世記 17

1 アブラムが九十九歳になった時、神様が彼に現われました。「わたしは全能の神である。 わたしの命令に従って正しく生きなさい。 2-4 わたしはおまえと契約を結ぶ。 おまえが大きな国民になることを保証する契約だ。 事実、おまえは一つの国民だけでなく、たくさんの国の先祖となるのだ。」 神様が話すのを、アブラムは地にひれ伏し、顔をすりつけんばかりにして聞いていました。 5 「もう一つある。 わたしはおまえの名前を変えようと思う。これからは『アブラム』〔「地位の高い父」の意〕ではなく、『アブラハム』〔「国々の父」の意〕と名のりなさい。 実際そうなるからだ。宣言してもかまわない。 6 子孫を数えきれないほどふやそう。 たくさんの国ができることだろう。 おまえの子孫からは王も出る。 7-8 この契約を、わたしは何世代にもわたって永遠に守り続ける。 おまえだけでなく、おまえの子孫との間の契約でもあるからだ。 わたしがおまえの神となり、また、おまえの子孫の神となるという契約なのだ。 このカナンの全土は永久におまえとおまえの子孫のものだ。 そして、わたしがおまえたちの神となる。 9-10 おまえは契約の条件を忠実に守らなければならない。 おまえもおまえの子孫も一人残らずだ。 その条件というのは、男はみな割礼を受けるということだ。 11 つまり、生殖器の包皮を切り取る。 これが、おまえたちがこの契約を受け入れたしるしとなる。 12 男の子はみな、生まれて八日目に割礼を受けなければならない。 おまえの家の子だけでなく、外国人の奴隷も、男はみな受ける。 この条件は永遠に変わらない。 おまえの子孫全員に適用すべきものだ。 13 例外は一人も認められない。 割礼は、おまえたちの体そのものが、永遠の契約にあずかっていることのしるしだからだ。 14 これを拒否する者はだれでも、部族の一員とはみなされないことになる。 わたしの契約を無視した罰だ。」 15 神様はさらに続けました。 「おまえの妻サライだが、これからは『サライ』ではなく、『サラ』〔「王女」の意〕にしなさい。 16 わたしは彼女を祝福する。 彼女はおまえの息子を産むだろう。 すばらしい祝福を与えて、彼女を国々の母とする。 おまえの子孫からは大ぜいの王が出ることだろう。」 17 これを聞いたアブラハムは、地にひれ伏して神様を礼拝しました。 しかし、とても信じられないことなので、心の中では笑っていました。 「この私が父親になるんだって? 百歳の老いぼれが? それにサラだってもう九十だ。 赤ん坊なんかできるはずがない。」 18 アブラハムは神様に申し上げました。 「それはありがたいことです。 どうぞ、イシュマエルを祝福してくださいますように。」 19 「いいや、わたしはそうは言っていない。 サラが、おまえの息子を産むのだ。 その子をイサク〔「笑い声」の意〕と名づけなさい。わたしは永遠の契約を、彼と彼の子孫との間に結ぶ。…

創世記 18

1 アブラハムがマムレの樫の木のそばにテントを張っていた時、神様は再び彼に現われました。 そのいきさつは次のとおりです。 夏のある暑い日の午後でした。 アブラハムはテントの入口に座っていました。 2 ふと目を上げると、三人の男がこちらに来ます。 すぐさま立ち上がり、走って行って、喜んで出迎えました。 3-4 「まあまあ、そんなに先を急がないで、どうぞごゆっくり。 この木陰で少しお休みください。 水をお持ちしますから、足を洗ってさっぱりなさるといいですな。 5 何もありませんが、食事でもいかがですか。 元気がつきますよ。 しばらく休んで、それから旅を続けられたらよろしいでしょう。」 「ありがとう。 おことばに甘えて、おっしゃるとおりにさせていただきましょう。」 6 アブラハムはさっそく、テントの中のサラのところへ駆け戻りました。 「さあさあ、大急ぎでパンケーキを作ってくれ。 いちばん上等の粉でな。 お客さんが三人お見えだ。」 7 次は家畜のところです。 走って行って、群れの中から太った子牛を選ぶと、召使に急いで料理するよう言いつけました。 8 まもなく、チーズとミルクと子牛のあぶり肉が運ばれ、食卓が整えられました。 客が食事をしている間、アブラハムはそばの木の下に立っていました。 9 「ところで、奥さんはどちらに?」と三人が尋ねるので、「テントの中です」と答えました。 10 三人のうちの一人、神様が言いました。 「来年の今ごろわたしがまた来る時、おまえとサラの間に、男の子が生まれているだろう。」 サラはうしろのテントの入口で一部始終を聞いていました。 11 この時にはアブラハムもサラもすっかり年をとり、サラは、子供ができる時期はとうの昔に過ぎていたのです。 12 あまりばかばかしくて、サラは笑いをかみ殺すのがやっとでした。 「私みたいなおばあさんが、赤ん坊を産むだなんて」と、彼女は自分をあざけるようにつぶやきました。 「それにあの人だってもう年だし……。」 13 神様はそれを聞きとがめ、アブラハムに言いました。 「なぜサラは笑ったのか。 なぜ『私みたいなおばあさんは赤ん坊なんか産めない』などとつぶやくのか。 14 神にできない事は何もない。 おまえに言ったとおり、来年の今ごろまた来る時には、必ずサラに子供が生まれるようにしよう。」 15 サラはあわてて否定しました。 「笑っただなんて、とんでもございません。」 どうなることか、こわくてたまりません。 必死の思いでごまかしましたが、神様はちゃんとご存じでした。 16…

創世記 19

1 その日の夕方、二人の御使いがソドムの町の入口へやって来ました。 ちょうどそこに、ロトが座っていました。 ロトは二人を見ると立ち上がって出迎え、あいさつしました。 2 「どうぞ私の家にお泊まりください。 あすの朝、お好きな時間にお発ちになればよろしいでしょう。」 「いいえ、けっこうです。 一晩くらいこの広場で休みますから。」 3 けれども、ロトはあとへ引きません。 とうとう二人はロトの家について行きました。 彼は客のためにイースト菌を入れない焼きたてのパンを出し、ごちそうを並べました。 食事が終わり、 4 床の用意にかかろうとしていると、町中の男たちが、若者から年寄りまで、ぐるりと家を取り囲み、 5 大声でわめき散らしました。 「やいやい、あの二人を外に出せっ。 うーんとかわいがってやるぜっ。」 6 ロトは連中をなだめようと外へ出、うしろの戸を閉めました。 7 「お願いだ。 乱暴はやめてくれ。 8 うちには結婚前の娘が二人いるから、好きなようにしてかまわない。 だがな、客人に手出しをすることだけは、やめてくれないか。 私が責任をもってお泊めしたんだから。」 9 「うるせえ、引っ込んでろっ!」 暴徒どもは口々に叫びました。 「だいたい自分を何様だと思ってやがるんだ。 お情けでこの町に住ませてもらってるのに、おれたちに命令しようってのか? こうなったら、あの二人のことなんかどうでもいいぜ。 それより、おまえの生意気な面の皮をひっぱがしてやらあ」と言うが早いか、連中はどっとロトに飛びかかり、戸をこわし始めました。 10 絶体絶命です。 ところが、もうだめだと思った時、客の二人がさっと腕を伸ばしてロトをつかみ、家の中に引きずり込むと、がっちり戸にかんぬきをかけてしまったのです。 11 そして男たちの目をしばらく見えなくしたので、戸がどこにあるのかわからなくなってしまいました。 12 客というのは、実は神様の使いだったのです。 二人はロトに言いました。 「ところで、この町に親戚がありますか。 家族の皆さんも、それからもし親戚があれば、その人たちもみな、ここから逃げなさい。 13 われわれは今から町を滅ぼします。 ここの腐敗した有様は天にまで知れ渡り、神様が、『そんな町は滅ぼせ』と言われたのです。」 14 ロトは急いで表へ飛び出し、娘のいいなずけのところへ駆けつけました。 「すぐ町から出るんだ。 神様がこの町、この町を滅ぼそうとしておられる!」 ところが若者たちには、ロトが気が狂ってしまったとしか思えません。 あっけにとられて彼を見つめるだけでした。 15…

創世記 20

1 さて、アブラハムは南のネゲブの地へ移り、カデシュとシュルの間に住みました。 ゲラルの町にいた時、 2 彼はサラを妹だと言ったので、アビメレク王は彼女を王宮に召し入れました。 3 ところがその夜、神様が夢で王に現われました。 「おまえは夫のある女を召し入れた。 いのちはないものと思え。」 4 しかしアビメレクは、まだ彼女と床を共にしてはいませんでした。「神様、それはとんだぬれ衣です。 5 妹だと言ったのは、あの男のほうですよ。 それに彼女自身も、『ええ、彼は兄です』と言ったんです。 私にはやましい気持ちなどみじんもありませんでした。」 6 「それはよくわかっている。 だから、おまえが罪を犯さないようにしてやったのだ。 彼女に指一本ふれさせないように、わたしが仕向けたのだ。 7 さあ、彼女を夫のもとに返しなさい。 彼は預言者だから、おまえのために祈ってくれるだろう。 そうすればおまえは助かる。 だが、彼女を返さなければ、おまえも家族の者も、いのちはないぞ。」 8 翌朝、王は早々と起き、宮殿で働く人々全員を集めました。 王から事のいきさつを聞いた人々はみな、恐ろしさに震え上がりました。 9-10 このあと、王はアブラハムを呼びつけました。 「いったいなんということをしてくれたのか。 こんな仕打ちを受ける覚えはさらさらありませんぞ。 もう少しで、私も国も、たいへんな罪を犯すところだった。 全く、あなたがこんなことをするとは……。 どうして、こんなひどいことを考えついたのか?」 11-12 アブラハムは答えました。 「実を言いますと、てっきりこの町は神様を恐れない町だと思ったのです。 『きっと、私を殺して妻を奪うだろう。』 そう思いました。 それに、あれが妹だというのはまんざら嘘でもありません。 腹違いの妹なのです。 私たちは兄弟で結婚したのです。 13 そんなわけで、神様の命令で故郷を発つ時、あれに『これからどこへ行っても、おまえは私の妹だということにしてほしい』と頼んでおいたのです。」 14 アビメレク王は、羊と牛と男女の奴隷をアブラハムに与え、妻のサラを返しました。 15 「さあ、私の国をご覧なさい。 どこが気に入りましたかな。 どこでもお好きな所に住んでかまいませんぞ。」 王はアブラハムにこう言うと、 16 サラの方を向いて続けました。 「あなたの『お兄さん』に、弁償金として銀貨一千枚を差し上げることにしよう。 それで万事まるく収めてもらえないだろうか。 こういうことは、きちんと片をつけておきたいのでね。」 17 アブラハムは神様に、王と王妃をはじめ、一族のすべての女性の病いが治るようにと祈ったので、彼女たちはまた子供ができるようになりました。…