ヨシュア記 24

1 次にヨシュアは、イスラエル人全員を、指導者である長老、将校、裁判官とともに、シェケムに召集しました。 全会衆が、神様の前に立たされたのです。 2 そこでヨシュアは、次のように演説しました。 「よいか、イスラエルの神様は、こうお告げになった。 『もともとおまえたちの先祖は、アブラハムやナホルの父テラをはじめとして、ユーフラテス川の東に住み、ほかの神々を礼拝していた。 3 だが、わたしはおまえたちの父祖アブラハムを、ユーフラテス川の向こうから連れ出し、カナンの地に導き入れ、その子イサクから多くの子孫が生まれるようにした。 4 イサクが授かった息子は、エサウとヤコブだ。 エサウには、セイル山周辺の地域を与えたが、ヤコブとその子供たちは、エジプトへ下って行った。 5 そののち、わたしはモーセとアロンを遣わし、エジプトに大災害を下した。 そうして、エジプトからわたしの国民を解放しようと連れ出したのだ。 6 ところが、紅海まで来た時、エジプト人が戦車と騎兵で追いかけて来るではないか。 7 その時、イスラエル人が助けを叫び求めたので、わたしはイスラエル人とエジプト人との間に暗やみを置き、海を彼らに襲いかからせて、おぼれ死にさせた。 おまえたちはこの出来事を、その目でしかと見たはずだ。 以後、イスラエル人は長いあいだ荒野で暮らした。 8 そして、ついにわたしは、ヨルダン川の東側、エモリ人の住む地に、おまえたちを連れて行ったのだ。 エモリ人は抵抗したが、わたしは彼らを滅ぼし、その地をおまえたちに与えた。 9 ついで、モアブの王バラクがイスラエルに宣戦布告をした。 バラクは、ベオルの子バラムを呼び、おまえたちに呪いをかけようとたくらんだ。 10 だが、わたしはバラムの願いなど聞く耳を持たず、かえって、おまえたちを祝福させた。 こうしてイスラエルは、バラクの陰謀から救われたのだ。 11 次にいよいよ、おまえたちはヨルダン川を渡ってエリコまで来た。エリコの住民は対抗して戦った。 ほかにも、ペリジ人、カナン人、ヘテ人、ギルガシ人、ヒビ人、エブス人が同じように応戦してきた。だが、入れ替わり立ち替わり立ち向かって来る敵を、わたしは全滅させた。 12 また、おまえたちの目の前でくまばちを送り、エモリ人の二人の王とその国民を追い散らしたこともあった。 勝利をもたらしたのは、剣でも弓でもなかったのだ。 13 わたしはおまえたちに、手に入れるために自ら労したわけでもない地と、自ら建てたわけでもない町々とを与えた。 そうだ、いま住んでいるその町だ。 食料としては、おまえたちの手では植えもしなかったぶどう畑とオリーブ畑を、備えてやった。』 14 まさに、おことばのとおりだ。 かくなる上は、神様を恐れかしこみ、誠心誠意、お仕えしようではないか。 ユーフラテス川の向こうやエジプトで、先祖が拝んでいたような偶像とは、きっぱり縁を切れ。 ただ神様に仕え、神様を礼拝せよ。 15 もし神様に従いたくなければ、たった今、だれに従うかを決めるがいい。 ユーフラテス川の向こうで先祖が拝んでいた神々であろうが、この地に住むエモリ人の神々であろうが、好きに選べ。 だが、わしとわしの家族とは、あくまで神様に仕えるぞ。」…

士師記 1

1 ヨシュアの死後、イスラエル国民は神様から指示を仰ごうとしました。 「カナン人と戦うには、まずどの部族が出陣すればよいのでしょうか。」 2 「ユダ部族だ。 彼らに、輝かしい勝利を約束しよう。」 3 ところが、ユダ部族の指導者たちは、シメオン部族に加勢を求めたのです。 「われわれの割り当て地に住むやつらを追っ払うのに、力を貸してほしい。 その代わり、君らが戦う時には必ず応援するよ。」 そんなわけで、シメオンとユダの軍隊は、合流して出陣したのです。 4-6 神様のお助けによるのでしょう、彼らはカナン人とペリジ人を打ち破ることができました。 このベゼクでの戦闘で、なんと一万人もの敵が殺されたのです。 アドニ・ベゼク王は逃げ出したものの、すぐ捕らえられ、手足の親指を切り取られてしまいました。 7 「わしもこうやって、七十人もの王の親指を切り取り、わしの食卓から落ちるパンくずを食べさせたものだが、いま神様は、そのつけを回してこられたというわけだ」と、王は嘆きました。 王はエルサレムへ連れて行かれ、そこで息を引き取りました。 8 ユダ部族はエルサレムを占領し、住民を殺し、町に火をかけました。 9 そののちユダの軍隊は、低地に住むカナン人を攻めたばかりか、山地やネゲブのカナン人とも戦いました。 10 また、以前キルヤテ・アルバと呼ばれたヘブロンにいるカナン人めがけて攻撃を開始し、シェシャイ、アヒマン、タルマイなどの町を滅ぼしました。 11 そのあと、デビルを攻撃しました。 デビルは、以前キルヤテ・セフェルと呼ばれていました。 12 「だれか、率先してデビルを攻撃する者はおらんのか。 占領した者には、娘アクサを妻として与えるぞ」と、カレブは全軍に呼びかけました。 13 カレブの弟ケナズの息子、オテニエルが、先陣を志願してデビルを占領し、アクサを花嫁に迎えました。 14 二人が新家庭を築くために巣立つ時、アクサは夫にそそのかされ、贈り物としてもっと土地をくれるよう、父にねだることにしました。 彼女が、ろばから降りると、カレブは尋ねました。 「どうした。 何か欲しいものでもあるのか。」 15 「ネゲブの地は十分にいただいたのですけれど、できれば、泉もいただきたいの。」 そこでカレブは、上の泉と下の泉を与えました。 16…

士師記 2

1 ある日、神様の使いがギルガルから上って来て、ボキムに到着し、イスラエル国民にこう告げました。 「わたしはおまえたちを、先祖との約束に従って、エジプトからこの地へ連れて来た。 また、おまえたちと結んだ契約を決して破らないと宣言した。 2 ただし、それには条件があったはずだ。 この地の先住民と友好条約を結んではならないという条件だ。 この地の異教の祭壇を取りこわせと命じたではないか。にもかかわらず、なぜ従わなかったのか。 3 おまえたちが契約を破った以上、もはや無効だ。 もう、おまえたちの地に住む諸国民を滅ぼすとは約束しかねる。 それどころか、あの人々はおまえたちの悩みの種となり、彼らの神々は常に誘惑の罠となるだろう。」 4 御使いが語り終えると、人々はせきを切ったように泣きだしました。 5 それでこの地は、ボキム〔「人々が泣いた場所」の意〕と呼ばれるようになったのです。 人々は神様にいけにえをささげました。 6 ヨシュアがイスラエルの全軍を解散させると、各部族はそれぞれ新しい領地めざして移動し、各自の所有地を手に入れました。 7-9 神の人ヨシュアは百十歳で世を去り、エフライム山中、ガアシュ山の北にあるティムナテ・ヘレスの自分の領地に葬られました。 ヨシュアが生きている間、人々は神様に忠実でした。 その死後も、神様がイスラエルになさった、驚くべき奇蹟を目撃した長老たちの存命中は、その態度に変わりはなかったのです。 10 ところが、ヨシュアと同世代の人々がみな世を去ると、あとの世代は神様を礼拝せず、神様がイスラエルのためになさった力強い奇蹟さえ、意に介さなくなったのです。 11 彼らは、神様が断固として禁じたことを次から次へと犯していきました。 もちろん、異教の神々を拝むことも平気でした。 12-14 イスラエル人をエジプトから連れ出してくださったお方、先祖が心から礼拝してきた神様を捨ててしまったのです。 そのあげく、近隣諸国の偶像にぬかずいて拝む有様でした。 神様の怒りは、全イスラエルに対して燃え上がりました。 神様に背を向け、バアルやアシュタロテのような偶像を拝むイスラエルを、神様は敵のなすがままに任せたのです。 15 今や、イスラエル国民が敵と戦おうと進軍しても、神様が行く手をはばみます。 こうなることは、前もって神様が警告し、はっきり誓っていたのです。 それでもなお、かつてない苦境に立たされた人人を、 16 敵の手から救い出すために、神様は士師(王国設立までの、軍事的・政治的指導者)を起こされたのです。 17 しかし、その士師にさえ耳を貸そうとせず、人々はほかの神々を拝んで、神様への誠実を踏みにじったのです。 なんと早く、先祖が歩んだ信仰の道から離れてしまったことでしょう。 それは、神様の戒めに従うことを拒んだからです。 18 どの士師も、生涯を通して、イスラエル国民を敵の手から救い出しました。 苦しみに押しつぶされそうな人々のうめきを聞き、神様があわれんでくださったからです。 こうして神様は、士師の在世中はイスラエルを助けてくださいました。 19 しかし、士師が死ぬと、人々はたちまち正しい道を捨て、先祖よりもいっそう堕落したのです。 強情を張り、異教の神々に祈りをささげるわ、地にひれ伏して礼拝するわで、周辺諸国の悪習慣に再び染まり、抜け出ることができませんでした。…

士師記 3

1-3 カナンで戦ったことのない、イスラエルの新しい世代を試すために、神様がこの地に残した国民をあげましょう。 神様はイスラエルの若者に、敵を征服することによって信仰と従順を学ぶ機会を、与えようとなさったのです。 ペリシテ人の五つの町 カナン人 シドン人 バアル・ヘルモン山からレボ・ハマテまでのレバノン山系に住む ヒビ人 4 これらの国民は、新しい世代への試金石となりました。 モーセが与えた神様の戒めに、新しい世代が従うかどうかが、はっきりするからです。 5 それでイスラエル人は、カナン人、ヘテ人、ヒビ人、ペリジ人、エモリ人、エブス人に混じって生活しました。 6 ところが、異民族を滅ぼすどころか、イスラエルの若者は彼らの娘を妻にめとり、イスラエルの娘は彼らの息子に嫁いだのです。 やがてイスラエルは、異教の神々を拝むようになりました。 7 このように、神様に対してさんざん悪事を重ねました。 それは、神様を裏切って、バアルやアシェラなどの偶像を拝んだからです。 8 ついに、神様の怒りは、めらめらと燃え上がりました。 イスラエルはメソポタミヤの王クシャン・リシュアタイムに征服され、八年間その支配に服することになったのです。 9 しかし、神様に叫び求めると、神様は救いの手を差し伸べ、カレブの甥オテニエルを遣わしてくださいました。 10 神の御霊が彼を支配していたので、彼はイスラエルの改革と粛清を断行しました。 その結果、オテニエルの率いるイスラエル軍がクシャン・リシュアタイム王の軍勢と対戦した時、神様はイスラエルに加勢し、完全な勝利を収めさせてくださったのです。 11 こうして、オテニエルが治めた四十年の間は、平和が続きました。ところが彼が世を去ると、 12 イスラエル国民は再び罪を犯すようになったのです。 すると神様は、モアブの王エグロンに加勢し、イスラエルの一部を占領させました。 13 エグロン王と同盟を結んだのは、アモン人とアマレク人でした。 同盟軍はイスラエルを破り、「なつめやしの町」と呼ばれたエリコを手に入れました。 14 こうして向こう十八年の間、イスラエル国民はエグロン王の圧政に苦しむことになったのです。 15…

士師記 4

1 エフデが世を去ると、イスラエル国民はまた、性懲りもなく悪を重ねました。 2-3 それで神様は、ハツォルにいたカナン人の王ヤビンに、イスラエルを征服させたのです。 王の軍の最高司令官はシセラで、ハロシェテ・ハゴイムに住んでいました。 彼は鉄の戦車九百台をかかえ、二十年間イスラエル人を悩まし続けたのです。 ついにイスラエル人は、神様の助けを求めました。 4 当時イスラエルの指導者で、国民を神様に立ち返らせる責任を負っていたのは、ラピドテの妻、女預言者デボラでした。 5 彼女は、エフライム山中のラマとベテルの間にある「デボラのなつめやしの木」と呼ばれる場所に、法廷を設けていました。 人々はそこへ来て、争い事を解決したのです。 6 ある日デボラは、ナフタリの地のケデシュに住むアビノアムの息子バラクを呼び寄せ、こう言い渡しました。 「イスラエルの神様がおまえに、ナフタリとゼブルンの両部族から一万人を動員しろとおっしゃるんだよ。 その一万の兵を率いて、タボル山へお行き。 7 もちろん戦う相手は、ヤビン王の軍勢、シセラ将軍の指揮のもと戦車を擁する大軍だよ。 だけど神様は、『敵をキション川に引き寄せるから、そこで打ち破れ』とおっしゃるんだよ。」 8 「わかりました。 ご命令のとおりにしましょう。 しかし、あなたにもごいっしょ願いたいですな。」 9 「いいでしょう。 いっしょに行きましょう。 ただし、今のうちに言っておきますが、シセラを倒す栄誉は、おまえではなく、一人の女が受けることになりますよ。」 こう言って、デボラはバラクとともにケデシュへ向かいました。 10 バラクが、ゼブルンとナフタリの人々から義勇兵を募ると、一万人がケデシュに結集しました。 デボラもいっしょです。 11 さて、モーセの義兄弟ホバブの子孫のケニ人でヘベルという人が、氏族の者から離れて、ケデシュ近郊のツァアナニムの樫の木の近くに住んでいました。 12 シセラ将軍は、バラクの率いるイスラエル軍がタボル山に陣を敷いた、との知らせを受けて、 13 鉄の戦車を九百台も備えた全軍を動員し、ハロシェテ・ハゴイムからキション川へと進みました。 14 その時、デボラはバラクに言いました。 「さあ、今こそ攻撃のチャンスよ。 神様が先頭に立っておられます。 もうシセラのいのちは、いただいたも同然よ。」 そこでバラクは、一万人を率いてタボル山を下り、戦いに臨みました。 15 神様が兵も戦車隊もパニック状態に陥れたので、敵は総くずれとなり、シセラは戦車から飛び降り、走って逃げ出すしまつでした。 16…

士師記 5

1 デボラとバラクは、この大勝利をたたえて歌いました。 2 「神様をほめたたえよ。 イスラエルの指導者が雄々しく先頭を行くと、 国民は喜んで従った。 そうだ、神様をほめたたえよ。 3 王よ、君主よ、耳を傾けよ。 イスラエルの神様にささげる 私の歌声に。 4 神様がセイルからわれわれを導き出し、 エドムの平原を進まれた時、 地は震え、 天は雨を降らせた。 5 イスラエルの神様の御前では、 シナイ山さえ揺れ動いた。 6 シャムガルの日、ヤエルの日、 街道は荒れ果て、 旅人は細いわき道を通った。 7 デボラがイスラエルの母となるまでは、 イスラエルの人口は減り続けた。 8 イスラエルが新しい神々を選んだ時、 すべてが衰えた。 いったい、どこのだれが…

士師記 6

1 やがてイスラエル国民は、またもや、ほかの神々を拝み始めました。 それで神様は、敵を起こして懲らしめようとなさったのです。この時は、ミデヤン人に七年間くるしめられることになりました。 2 ミデヤン人はとても残忍だったので、イスラエル人は山に難を避け、洞窟やほら穴に身を隠しました。 3-4 イスラエル人が種をまくと、ミデヤン人やアマレク人をはじめ、近隣の国から略奪者が来て、農作物を荒らし、ガザに至るまで各地を荒らし回り、食糧をぜんぶ奪ってしまうのです。 羊、牛、ろばもいなくなりました。 5 敵の大軍は、おびただしい数のらくだの群れを連れて来て、その地を荒らし尽くすまで動こうとしないのです。 6-7 イスラエルは、ミデヤン人のために丸裸にされてしまいました。 ついに、たまりかねた人々は、またも神様に、助けてくださいと叫んだのです。 8 神様は、一人の預言者を遣わし、その口をとおしてお答えになりました。 「イスラエルの神様は、あなたがたをエジプトでの奴隷生活から救い出してくださった。 9 また、エジプト人およびいっさいの残忍な者たちの手から助け出し、敵を一掃して、この地を与えてくださったのだ。 10 その神様が、『わたしは、おまえたちの神である主だ。 よいか、ぐるりを取り囲むエモリ人の神々を拝んではならぬぞ』とお命じになったではないか。 それなのに、あなたがたは聞き従わなかった。」 11 ある日、神様の使いが現われ、アビエゼル人ヨアシュの農地内にある、オフラの樫の木の下に座っていました。 ヨアシュの息子ギデオンは、酒ぶね〔ぶどうを絞ってぶどう酒をつくる穴〕の底で、小麦を打っていました。 ミデヤン人から身を隠していたのです。 12 御使いはギデオンの前に立ち、「勇士よ、神様はおまえと共におられる」と告げました。 13 ギデオンは答えました。 「初めてお目にかかりますね……。 どうか教えてくれませんか。 神様が共におられるのなら、なぜ、こんなことが次から次へと起こるんですか。 ご先祖から聞かされましたよ。 神様がエジプトから連れ出してくださる時、ものすごい奇蹟をいっぱい行なわれたとね。 なのに、今はどうです。 そんな奇蹟のかけらもないじゃありませんか。 もう神様は私たちを見捨てて、ミデヤン人にしたい放題をさせ、踏みつけるに任されるんだ。」 14 すると神様は、ギデオンに向き直って命じました。 「わたしがおまえを強くしよう。 行け、イスラエルをミデヤン人から救い出すのだ。 わたしがおまえを遣わすのだ。」 15 「神様、めっそうもありません。 イスラエルを救うなんて、とてもできっこありません。 私の家は、マナセ部族の中でもいちばん貧乏だし、それに私は、家でいちばん年下なんです。」 16 「よいか。 神であるわたしがついているんだ。 だからおまえは、たちどころにミデヤンの大軍を打ち破れる。」 17 「もしそれがほんとうなら、その証拠に奇蹟を見せてください。 いま語りかけてくださっているあなたが本当の神様であると、証明してほしいんです。…

士師記 7

1 エルバアル、すなわちギデオンの率いる軍勢は、朝はやく出立し、ハロデの泉まで進みました。 ミデヤンの連合軍はその北の方、モレの山沿いの谷に陣を敷いていました。 2 その時、神様はギデオンにこうお告げになったのです。 「兵が多すぎるぞ! このままでミデヤンと戦わせるわけにはいかんな。 イスラエル国民が自力で勝ったつもりになって、わたしに傲慢な態度をとるかもしれんからな。 3 臆病風に吹かれている者など、さっさと家に帰してしまえ。」 すると、二万二千人が去り、戦闘意欲のある者一万人だけが残りました。 4 しかしなお神様は、「まだ多すぎるぞ! 全員を泉に連れて下れ。 だれがおまえと共に行くべきで、だれが行くべきでないか、はっきり示してやろう」と言われたのです。 5-6 ギデオンは一同を水辺に集合させました。 すると神様の声がして、「水の飲み方で全員を二組に分けよ。 最初の組には、手で水をすくい、口にあてて犬のようになめる者どもを組み入れ、第二の組には、かがみ込んで、口を水につけて飲む者どもを振り分けよ。」 手で水をすくって飲んだのは、三百人だけでした。 ほかの者はみな、口を水につけて飲んだのです。 7 神様はきっぱり言われました。 「わたしは、最初の組の三百人でミデヤン人を征服しよう。 残りはみな家へ帰らせるがよい。」 8-9 そこでギデオンは、兵の持っているつぼとラッパを供出させてから、三百人だけを残し、あとは全員帰宅させました。 さて、ミデヤン人の陣営は眼下に見下ろす谷にありました。 その夜のこと、神様はギデオンに命じました。 「起きろ! 全軍を率いてミデヤンの陣地に突っ込め! 必ず勝つぞ。 10 それでも心配なら、配下のプラを連れて敵陣へ行き、 11 いったい敵陣ではどんな話が交わされているか、自分の耳で確かめるがよかろう。 きっと勇気百倍して攻撃に出られるはずだ。」 ギデオンはプラを連れ、やみにまぎれて敵の前哨基地にもぐり込みました。 12-13 ミデヤン人、アマレク人、そのほか東方諸国の兵士が、いなごのように谷に群がっていました。 まさに浜辺の砂のようでした。 その上、おびただしい数のらくだがいます。 テントの一つにまではって行くと、悪夢から覚めた男が、ちょうどその恐ろしさを仲間に話しているところでした。 「全くいやな夢を見たよ。 どでかい大麦のパンのかたまりがな、この陣地めがけて転がり落ちて来るのさ。 そいでな、テントをぺしゃんこにしちまうんだ。」 14 「そりゃ、こうに違いないぜ。 イスラエル軍にヨアシュの息子のギデオンってのがいてな、そいつがわれわれ連合軍を全滅させようとしてるんだ。」 15 これを聞いたギデオンは、その場に突っ立ったまま、神様を礼拝する以外にありませんでした。 すぐさまイスラエルの陣営に取って返し、こう叫びました。 「集まれ! 神様はわれわれの手にミデヤンの大軍を渡してくださるぞ!」 16…

士師記 8

1 ところが、エフライム部族の指導者たちは、激しくギデオンに詰め寄りました。 「ミデヤン人との初陣を飾る際、なぜわれわれに声をかけてくれなかったんだね。」 2-3 「あなたがたには、神様がちゃんと、ミデヤンの将軍オレブとゼエブを、捕らえさせてくださったじゃないですか。 それに比べたら私のしたことなんか! この戦いの最後を飾ったのは、あなたがたですよ。 そのほうが、戦いをしかけるよりも大仕事だったじゃありませんか。」 ギデオンの答えに、彼らはようやく納得しました。 4 さて、ギデオンと三百人の兵士はヨルダン川を渡りました。 かなり疲れていましたが、追撃の手はゆるめません。 5 ギデオンは、スコテの人々に食べ物をくれるよう頼みました。 「われわれは、ミデヤン人の王ゼバフとツァルムナを追いかけているが、くたくたな上に腹ぺこなんだ。」 6 ところが、スコテの指導者たちからは冷淡な返事が戻ってきただけです。 「まだゼバフとツァルムナを捕らえたわけじゃないんだろう。 食べ物を恵んだのに負けられでもしたら大へんだ。 あいつらはここへ来て、わしらを殺すに違いないからな。」 7 そこでギデオンは、こう警告しました。 「神様が二人を捕らえさせてくださったあかつきには、戻って来て、野のいばらやとげで、おまえたちの肉を引き裂いてくれるわ。」 8 それからペヌエルに上り、食糧を求めたところ、また同じ返事です。 9 そこで、ペヌエルの人々にも警告しました。 「この戦いに決着がついたら、戻って来て、このやぐらをたたきこわしてやるからな。」 10 そのころゼバフ王とツァルムナ王は、残りの兵一万五千を率いてカルコルにたてこもっていました。 とにかくこれが、連合軍で生き残ったすべてでした。 十二万人がすでに殺されていたのです。 11 ギデオンは、ノバフとヨグボハの東にある隊商路を迂回して、ミデヤンの陣営を急襲しました。 12 二人の王が逃げ出すと、ギデオンは追いかけて捕らえたので、敵軍は総くずれとなりました。 13 戦いがすんで、ギデオンはヘレスの坂道を帰路につきました。 14 この時、スコテから一人の若者を捕らえて来て、町の政治的・宗教的指導者七十七名の名前をあげさせたのです。 15 次に、ギデオンはスコテに取って返し、こう言いました。 「よくも、ゼバフ王やツァルムナ王を捕らえられっこないとあざけってくれたな。 おまけに、疲れて空腹をかかえたわれわれに、パン一つくれなかった。 よく見ろ。 こいつらがゼバフとツァルムナだ。」 16…

士師記 9

1 ある日、ギデオンの息子アビメレクは、シェケムに住む母方のおじを訪ねて頼みました。 2 「シェケムのお偉方のところへ行って、話していただけませんか。ギデオンの七十人の息子に支配されるのがよいか、それとも、ほかでもない、皆さんの身内の私に支配されるのがよいか、尋ねてほしいのです。」 3 おじたちは町の指導者を訪ね、アビメレクの考えを伝えて相談しました。 すると、母親がこの町の者だということで、彼らはアビメレクを受け入れたのです。 4 事が決まると、彼らはバアル・ベリテの偶像へのさい銭を、仕度金としてアビメレクに渡しました。 その金で彼はさっそく、言いなりになるごろつき連中を雇いました。 5 そして、一行を率いてオフラにある父の家へ行き、そこの石の上で、腹違いの兄弟七十人を殺してしまったのです。 ただし、最年少のヨタムだけは難を避けて隠れていました。 6 シェケムとベテ・ミロの住民は、シェケムの要塞のそばにある樫の木の下に集まって相談し、アビメレクをイスラエルの王にまつり上げました。 7 これを知ってヨタムは、ゲリジム山の頂上に立ち、シェケムの人人に大声で叫びました。 「皆さん。 神様に祝福されたかったら、私の言い分を聞いてくれ。 8 昔、木々が王様を選ぶことにした。 最初に、オリーブの木に王様になってくれと頼んだが、 9 断わられてしまった。 『わしゃ、神様と人とを祝福するためのオリーブ油をつくり出すのが楽しいんじゃよ。 ただ木々の上にそよいでいるだけなんて、まっぴらだ。』 10 それで、いちじくの木に、『あなたこそわれわれの王様です』と言った。 11 だが、いちじくの木も断わった。 『甘い実をならすのをやめてまで、ほかの木の上に頭をもたげようとは思わないよ。』 12 それで、ぶどうの木に、『どうか私どもを治めてください』と頼み込んだ。 13 もちろん、ぶどうの木も断わった。 『私は神様と人とを楽しませるぶどう酒をつくり出すのをやめてまで、ほかの木より偉くなろうなんて思いません。』 14 そこでとうとう、いばらに、『あんたが王様になってくれないか』と懇願した。 15…