サムエル記上 5

1-2 ペリシテ人は奪い取った神の箱を、エベン・エゼルの戦場からアシュドデの町へ移し、偶像ダゴンの宮に運び込みました。 3 ところが、翌朝、人々が見物に来ると、どうでしょう。 ダゴンが神の箱の前で、うつぶせに倒れているではありませんか。 人々はあわてて、元どおりの場所に安置しました。 4 ところが、次の日も同じことが起こったのです。 ダゴンの像は神の箱の前に、うつぶせに倒れていたのです。 しかも、今度は胴体だけで、頭と両手は切り取られ、戸口のあたりに散らばっています。 5 そういうわけで、ダゴンの祭司も参拝者も、今日に至るまで、アシュドデにあるダゴンの宮の敷居を踏んだことがありません。 6 そのうえ神様は、アシュドデと周囲の村々の住民をはれ物で悩ませ、滅ぼしにかかりました。 7 この出来事に、人々はわめき始めたのです。 「これ以上、イスラエルの神の箱をここに置いてはいかん。ダゴンの神様もろとも、みんなおだぶつだぞ。」 8 ペリシテ人の五つの町の指導者が召集され、神の箱をどうしたものか協議しました。 その結果、ガテに移すことになりました。 9 ところが、移せば移したで、今度はガテの町の人々が、老若を問わず、はれ物によって滅ぼされそうになったのです。 町はパニック状態に陥りました。 10 そこで人々は、その箱をエクロンに送りました。 箱を見たエクロンの人々は、「イスラエルの神の箱を持って来たりして、ガテの連中はわしらまで殺す気か」と叫びだしたのです。 11 そこでもう一度、指導者を召集し、町が全滅しないように、神の箱をイスラエルに戻してくれ、と懇願しました。 はれ物の災難が広がり、町はどこもかしこも死の恐怖におびえていたからです。 12 いのちだけは助かった者もひどいはれ物に悩まされ、至る所で悲鳴が聞こえました。

サムエル記上 6

1 神の箱は、まるまる七か月、ペリシテの野原に放り出されたままでした。 2 ペリシテ人は祭司や占い師らを呼び寄せ、こう尋ねました。 「この箱を、どうしたもんだろう。 これだけをイスラエルに送り返すわけにもいかないし、かといって、どんな贈り物を添えたらよいものやら……。」 3 「もちろん、贈り物は必要です。 はれ物の災いをおさめるには、罪を償ういけにえを贈るべきです。 それでもおさまらなければ、原因はほかにあるのです。」 4-5 「罪を償ういけにえとは、どんなものでしょうか。」 「災いを招いたはれ物をかたどって、金で五つの模型を作り、また、全国、つまり、五つの町と近隣の村々をくまなく荒らし回ったねずみをかたどって、金で五つの像を作りなさい。 これだけをちゃんと贈り、イスラエルの神をほめたたえれば、おそらく、あなたがたや神々の悩みの種も消えるでしょう。 6 かつてのエジプト人やその王のように強情を張ったり、逆らったりしてはいけません。 あくまでもイスラエルを去らせまいとしたおかげで、彼らが神から、どれほど恐ろしい災害を受けて痛めつけられたことか。 7 だから、さあ、新しい荷車を一台仕立て、それに子牛を産み落としたばかりの雌牛、つまり、まだくびきをつけられたことのない雌牛を二頭つなぎなさい。残された子牛は牛小屋に閉じ込めておくように。 8 箱をその荷車に載せ、ねずみやはれ物にかたどった金の像を詰めた箱もいっしょに置きなさい。 そして、雌牛の思いのままに引かせるのです。 9 もし国境を過ぎてベテ・シェメシュの方へ向かうなら、この大災害を下したのはイスラエルの神だと、はっきりするでしょう。 しかし、そちらへは行かず、〔子牛のいる牛小屋へ戻るなら〕、あれは偶然の出来事で、イスラエルの神とは全く関係ありません。」 10 人々は言われたとおりにしました。 子牛を産んだばかりの二頭の雌牛を車につなぎ、子牛を牛小屋に閉じ込めました。 11 ついで、神の箱と、金で作ったねずみやはれ物の模型を詰めた箱とを積み込みました。 12 果たせるかな、雌牛はうれしそうに鳴きながら、ベテ・シェメシュへの道をまっしぐらに突き進んだのです。 ペリシテ人の指導者たちは、ベテ・シェメシュの国境までついて行きました。 13 一方、ベテ・シェメシュの人々は、谷間で小麦の刈り入れをしていましたが、神の箱が来るのを見て、喜びのあまり飛び上がりました。 14 荷車はヨシュアという人の畑にさしかかり、大きな岩のそばで止まりました。 人々は、荷車を割ってたきぎとし、雌牛を殺して、完全に焼き尽くすいけにえを神様にささげました。 15 レビ部族の何人かが、車から神の箱と、ねずみやはれ物にかたどった金の像を入れた箱とを降ろし、岩の上に置きました。 その日、ベテ・シェメシュの人々によって、多くの完全に焼き尽くすいけにえや供え物が、神様にささげられたのです。 16…

サムエル記上 7

1 キルヤテ・エアリムの人々は来て、神の箱を、丘の中腹にあるアビナダブの家に運び込みました。 そして、アビナダブの息子エルアザルに管理を任せました。 2 箱は二十年間も、そこに置かれたままでした。 その間、イスラエル全体がすっぽり悲しみに包まれていたのです。 まるで神様から見放されたように思われたからです。 3 その時、サムエルがイスラエル全国民に言いました。 「心から神様のもとに帰りたいのなら、外国の神々やアシュタロテの偶像を取り除きなさい。 神様お一人に従う決心をしなさい。 そうすれば、ペリシテ人の手から救い出していただけます。」 4 そこで人々は、バアルやアシュタロテの偶像を取りこわし、神様だけを礼拝するようになりました。 5 それを見て、サムエルは命じました。 「全員、ミツパに集合せよ。 あなたがたのために神様に祈ろう。」 6 人々はミツパに集結し、井戸からくんだ水を神様の前で注ぐという、一大儀式を執り行ないました。 また、自らの罪を悔いて、まる一日断食しました。 こうして、サムエルはミツパで、イスラエルをさばいたのです。 7 ペリシテ人の指導者たちは、ミツパに大群衆が集結したことを知り、兵を動員して攻め寄せました。 ペリシテ軍が近づいて来たと聞いて、イスラエル人は恐れおののくしまつです。 8 「どうぞ、お救いくださるよう、神様に願ってください。」 とうとう、サムエルに泣きつきました。 9 そこでサムエルは、乳離れ前の子羊一頭を取り、完全に焼き尽くすいけにえとして神様にささげ、イスラエルを助けてくださるよう祈りました。 祈りは答えられたのです。 10 ちょうどサムエルがいけにえをささげていた時、ペリシテ人が攻めて来ました。 ところが神様は、天から大きな雷鳴をとどろかせ、彼らを大混乱に陥らせてくださったのです。 敵はたちまち総くずれです。 イスラエル人はなお、 11 ミツパからベテ・カルまで追い打ちをかけ、道々、完全に敵を滅ぼしました。 12 この時サムエルは、一つの石をミツパとシェンの間にすえ、エベン・エゼルと名づけました。 「助けの石」という意味です。 彼が、「まさしくここまで、神様がお助けくださった」と宣言したからです。 13 こうしてペリシテ人は制圧され、二度とイスラエルを襲撃したりしませんでした。 サムエルが生きている間、神様がペリシテ人を見張っておられたからです。 14 ペリシテ人の占領下にあった、エクロンからガテに至るイスラエルの町々は、晴れてイスラエルに返還されました。 イスラエル軍が奪い返したのです。 ところで、当時、イスラエル人とエモリ人とは友好関係にありました。 15 サムエルは生涯、イスラエルをさばきました。…

サムエル記上 8

1 やがて、年老いたサムエルは隠退し、イスラエルをさばく仕事を息子たちに譲りました。 2 長男ヨエルと次男アビヤは、ベエル・シェバで法廷を開きました。 3 ところが彼らには、父のような高潔さが欠けていたのです。 金に目がくらんで、わいろを取り、公平であるべき裁判を曲げてしまいました。 4 とうとうイスラエルの指導者たちがラマに集まり、この件でサムエルと話し合いました。 5 彼らは、サムエルの隠退後、息子たちの行為が思わしくなく、物事に支障をきたしている事情を説明しました。 そして、こう願ったのです。 「どの国にも王様がいます。 私たちにも王様を立ててください。」 6 サムエルはすっかり動揺してしまい、神様の前に出てうかがいを立てました。 7 神様の答えはこうでした。 「言うとおりにしてやるがよい。彼らは、おまえではなく、ほかでもない、このわたしを退けたのだ。もう、わたしに王であってもらいたくないのだ。 8 エジプトから連れ出して以来、今までずっと、彼らはいつもわたしを捨て、ほかの神々のあとを追ってばかりいた。 まさにそれと同じことを、今しようとしているのだ。 9 願うとおりにしてやるがよい。 ただし、王を立てることがどういうことか、よくよく警告しておいてくれ。」 10 サムエルは神様のおことばをそっくり伝えました。 11 「あなたがたの言うとおり王を立てれば、息子は王の軍隊に取られ、王の戦車の前を走ることになりかねませんぞ。 12 中には、戦場に追いやられる者も出るだろう。 そして、残りの者はみな、奴隷のように働かされる。 よいかな、王家の領地を耕し、刈り入れにも無報酬で駆り出され、武器や戦車の部品作りにも動員されるのじゃ。 13 王はな、娘も取り上げなさるぞ。 料理をこしらえたり、パンを焼いたり、香料を作ったりと、有無を言わせずこき使う。 14 それにな、ぶどう畑やオリーブ畑のうち、いちばん良い場所を王家の所領に差し出さねばならん。 15…

サムエル記上 9

1 ベニヤミン部族に、キシュという金持ちの有力者がいました。その人の父親はアビエル、アビエルの父はツェロル、ツェロルの父はベコラテ、ベコラテの父はアフィアハでした。 2 キシュの息子サウルは、国中で一番の美青年でした。 しかも、だれよりも肩から上だけ背が高く、すらっとしていたのです。 3 ある日、キシュのろばが迷い出てしまいました。 そこでキシュは、サウルに若者を一人つけて捜しにやったのです。 4 二人はエフライムの山地、シャリシャ地方、シャアリム地域、それからベニヤミンの全地をくまなく捜し回りました。 しかし、ついにろばは見つかりません。 5 ツフの地まで捜したあと、サウルは召使の若者に言いました。 「もう帰ろう。 こうなったら、おやじはろばより、おれたちのことを心配するよ。」 6 「若だんな様、名案がありますよ。 この町には神の人がおいでです。 だれからも厚い尊敬を集めているお方なんです。 そのお告げが、またぴたりと当たるそうでして……。 今から、お訪ねしてみましょう。 ろばがどこにいるか、きっと教えてくださいますよ。」 7 「それにしても、みやげの品が何もないな。 食べ物も尽きたしね。 何を贈ったらいいだろう。」 8 「ご心配なく。 私が少しばかりお金を持っています。 それを差し上げて、ご指示を仰いではいかがでしょう。」 9-11 「よし、そうしよう。」 話がまとまり、二人は預言者の住む町へ向かいました。 町へ通じる坂道を登って行くと、水くみに来た若い娘たちに出会いました。 そこで、「この町に先見者がおられますか」と尋ねました。 当時、預言者は先見者と呼ばれていました。 今なら「預言者のところへ行って聞こう」と言うところを、「先見者のところへ行って聞こう」と言っていたのです。 12-13 「ええ。 この道をちょっと行った所にいらっしゃいますわ。町の門のすぐ内側です。 ちょうど旅からお戻りになったところで、人々のために丘の上でいけにえをささげようとしておられます。さあ、お急ぎになったほうがいいわ。 せっかくお訪ねになっても、丘へ行かれたあとでは仕方ありませんもの。 あのお方がおいでになって、いけにえを祝福されたあとでないと、客人は食事ができませんの。」 14 二人は町へ急ぎました。 門にさしかかった時、丘に登ろうとやって来たサムエルに出会ったのです。 15 神様は前日、サムエルにこう告げておられました。 16 「あすの今ごろ、ベニヤミン出身の者をおまえのところへ遣わそう。 その者に油を注いで、わたしの国民の上に立つ者としなさい。彼はイスラエルをペリシテ人から救い出すだろう。 わたしが彼らを顧みてあわれに思い、その叫びを聞いたからだ。」 17 サムエルがひと目サウルを見た時、「これが、おまえに告げた者だ。 イスラエルを治めるべき者だ」と、神様の声が聞こえました。 18…

サムエル記上 10

1 サムエルはオリーブ油の入ったつぼを取り、サウルの頭に注ぎかけ、口づけしてから言いました。 「なぜ、こんなことをしたか、おわかりかな。 神様があなたを、ご自身の国民イスラエルの王に任命なさったからなのじゃ。 2 今わしと別れたら、あなたは、ベニヤミン領内のツェルツァフにあるラケルの墓のそばで、二人の人に出会うだろう。 その二人は、ろばがとっくに見つかったと伝えるはずじゃ。 また、お父上があなたのことを、『いったい、どこへ行ってしまったんだ』と心配している様子をも、知らせてくれる。 3 それから、さらにタボルの樫の木のところまで行くと、三人の人に出会う。 神様を礼拝するため、ベテルの祭壇に向かう人たちだ。 一人は子やぎ三頭を携え、一人はパンを三つ、他の一人はぶどう酒の皮袋一袋を持っているはずじゃ。 4 彼らはあなたにあいさつして、パンを二つくれる。 それを受け取りなされ。 5 そのあと、あなたは、あの『神の丘』として名高いギブア・エロヒムに行くことになる。 ペリシテ人の守備隊がおる所じゃ。 そこへ着くと、預言者の一団が、琴、タンバリン、笛、竪琴を鳴らし、預言をしながら、丘を降りて来るのに出会う。 6 その時、神の御霊が激しく下り、あなたも共に預言を始める。すると、全く別人になったように感じ、またそう振る舞うに違いない。 7 その時から、自分の思うとおり、その時その時の情況に応じて、いちばん良いと思われることをすればよろしい。 神様が導いてくださるからじゃ。 8 それから、ギルガルへ行き、七日間、わしを待ちなされ。 完全に焼き尽くすいけにえと和解のいけにえをささげるために、わしもまいるでな。 今後なすべきことは、そのとき教えることにしよう。」 9 サウルはサムエルのもとを辞して進んで行くうち、神様から新しい心を与えられました。 そしてサムエルの預言はすべて、その日のうちに現実となったのです。 10 サウルと召使が神の丘に着くと、果たせるかな、預言者の一団が近づいて来るのに出会いました。 神の御霊がサウルに下ると、彼も預言を始めたのです。 11 そのことを聞いたサウルの友人たちは、「どうしたんだ。 あのサウルが預言者だって?」とびっくりしました。 12 居合わせた近所の人も、「父親もあんなふうだったかい」とささやきました。 そういうわけで、「サウルも預言者なのか」ということばが、ことわざのようになったのです。 13 サウルは預言を終えると、丘の祭壇へと登って行きました。 14 おじが、「いったい、どこへ行っていたんだ」と聞きました。 「ろばを捜し回ってたんですが、見つからないので、サムエル様のところへ、ろばの居場所をうかがいに行ったんです。」…

サムエル記上 11

1 さて、ナハシュがアモン人の軍隊を率いて、イスラエル人の町ヤベシュ・ギルアデに迫りました。 ヤベシュの人々は講和を求め、「どうか、お助けください。 あなたがたにお仕えしますから」とすがりました。 2 ナハシュの答えは情け容赦のないものでした。 「よーし、わかった。 ただし、一つ条件がある。 全イスラエルへのみせしめに、おまえたち一人一人の右目をえぐり取らせてもらおう。」 3 なんということでしょう。 ヤベシュの長老たちは困りました。「七日間の猶予を下さい。 その間に、だれも助けに来てくれる者が見あたらなければ、お申し出に従うまでです。」 4 使者がサウルの住むギブアの町に駆けつけ、苦境を訴えると、だれもかれも声をあげて泣きだしました。 5 そこへ、畑を耕しに行っていたサウルが戻って来て、「いったい、どうしたんだ。 なぜ、みんな泣いているのか」と尋ねました。 人々はヤベシュからの知らせを伝えました。 6 その時、神様の霊が激しくサウルに下ったのです。 サウルは満身を怒りに震わせ、 7 二頭の雄牛をつかまえるや、それを切り裂き、使者に託して、イスラエル中に送りました。 そして、「サウルとサムエルに従って戦うことを拒む者の雄牛は、こんな具合にされるぞ」と言い送りました。 神様が人々にサウルの怒りを恐れさせたのでしょう、皆、いっせいに集まって来たのです。 8 ベゼクでその数を調べると、イスラエルから三十万人、さらにユダから三万人が加わっていることがわかりました。 9 そこでサウルは、使者をヤベシュ・ギルアデに送り帰し、「あすの昼過ぎまでには、助けに行くぞ」と告げさせたのです。 この知らせに、どれほど町中が喜びにわき立ったことか! 10 ヤベシュの人々は、敵にこう通告しました。 「降伏いたします。あす、あなたがたのところへまいりますから、どうぞお気のすむようになさってください。」 11 翌朝はやく、サウルはヤベシュ・ギルアデに駆けつけ、全軍を三隊に分けて、アモン人を急襲し、午前中にほとんど全員を打ち殺してしまいました。 残った者たちも散り散りばらばらになり、二人の者が共に残ることさえありませんでした。 12 その時、人々はサムエルに言いました。 「サウルなんかわれわれの王じゃない、などとほざいた連中は、どこでしょうか。 引っぱり出してください。 息の根を止めてやります。」 13 しかし、サウルは答えました。 「きょうはだめだ。 この日、神様はイスラエルを救ってくださったのだから、だれをも殺してはならん。」 14 続いて、サムエルが呼びかけました。 「さあ、みんなギルガルへ行こう。 サウルがわれわれの王であることを、改めて確認するのだ。」…

サムエル記上 12

1 サムエルは、再び人々に語りかけました。 「さあ、どうだ、願いどおり王を立てたぞ。 2 わしは息子をさしおいて、この人を選んだ。 わしは若いころから公の務めについてきたが、今や、白髪頭の老人にすぎない。 3 今わしは、神様の前に、神様が油を注がれた王の前に立っている。 さあ、言い分があるなら言ってくれ。 わしがだれかの牛やろばを盗んだりしたか。 みんなをだましたり、苦しめたりしたことがあるか。 それとも、わいろを取ったことがあるか。 もしそんな事実があったら、言ってくれ。 何かまちがいをしでかしていたなら、償いたいのだ。」 4 「とんでもない。 あなた様からだまし取られたり、苦しめられたりした覚えなど、これっぽちもございません。 それに、あなた様は、わいろなどとは全く無関係なお方です。」 5 「では、わしがあなたがたに対して潔白であることについて、神様ご自身と、神様が油を注がれた王とが、証人となってくださることになるぞ。」 「はい、そのとおりです。」 6 サムエルは厳粛に語りだしました。 「モーセとアロンをお立てになったのは、神様ご自身であった。 この神様が、ご先祖をエジプトから導き出してくださったのだ。 7 さあ、神様の前に、静かに立ちなさい。 ご先祖の時代からこのかた、神様があなたがたに対して、どれほどすばらしいわざを行なってくださったか、何もかも思い出させてやろう。 8 さて、エジプト抑留中のイスラエル人が叫び求めた時、神様はモーセとアロンを遣わし、われわれをこの地へと導いてくださった。 9 ところが、だれもみな、すぐに神様を忘れてしまった。 それで、ハツォル王の率いる軍隊の将シセラの手に落ちたり、ペリシテ人やモアブの王に征服されたりするのを、神様は放っておかれた。 10 そうなると、人々はもう一度、神様に叫び求めたのだ。 神様を捨て、バアルやアシュタロテなどの偶像を拝んだ罪も告白した。 そして、『もし敵の手から救い出していただけるなら、神様だけを礼拝いたします』と泣きすがった。 11 それで神様は、ギデオン、バラク、エフタ、サムエルを遣わして救い出し、安全な生活を取り戻してくださったのだ。 12 ところが、あなたがたときたら、アモン人の王ナハシュをこわがって、自分たちを治める王が欲しい、と言いだした。 実は、神様こそ、すでにあなたがたの王であったのにな。 神様はこれまでもずっと、あなたがたを支配してこられたのだ。 13 さあ、この人があなたがたの選んだ王だ。 よく見ておくがいい。 これで願いはかなったわけだ。 14 そこでだな、あなたがたが神様を恐れかしこみ、命令にも従い、反抗的態度を捨てるなら、そして、王ともども神様に仕える道を歩むなら、すべては順調に運ぶだろう。…

サムエル記上 14

1 一日かそこら過ぎたころでしょうか、王子ヨナタンは側近の若者に言いました。 「さあ、ついて来い。 谷を渡って、ペリシテ人の駐屯地に乗り込もうじゃないか。」 このことは、父サウルには内緒でした。 2 サウルと六百の兵は、ギブア郊外の、ミグロンのざくろの木付近に陣を敷いていました。 3 その中には、祭司アヒヤもいました。アヒヤはイ・カボデの兄弟アヒトブの息子で、アヒトブは、シロで神様の祭司を務めたエリの息子ピネハスの孫にあたります。 ヨナタンが出かけたことは、だれひとり知りませんでした。 4 ペリシテ人の陣地へ行くには、二つの切り立った岩の間の、狭い道を通らなければなりませんでした。 二つの岩は、ボツェツとセネと名づけられていました。 5 北側の岩はミクマスに面し、南側の岩はゲバに面していました。 6 ヨナタンは従者に言いました。 「さあ、あの神様を知らない連中を攻めよう。 神様が奇蹟を行なってくださるに違いない。 神様を知らない軍隊の力など、どれほど大きかろうと、神様には物の数じゃない。」 7 「そうですとも。 おこころのままにお進みください。 お供させていただきます。」 8 「そうか。 じゃあ、こうしよう。 9 われわれが敵の目にとまった時、『じっとしていろ。 動くと殺すぞ!』と言われたら、そこに立ち止まって、やつらを待とう。 10 もし『さあ、来い!』と言われたら、そのとおりにするのだ。 それこそ、やつらを打ち負かしてくださるという、神様の合図だからな。」 11 ペリシテ人は近づいて来る二人の姿を見かけると、「見ろ! イスラエル人が穴からはい出て来るぞ!」と叫びました。 12 そしてヨナタンに、「さあ、ここまで来い。 痛い目に会わせてやるぞ!」と大声で呼びかけたではありませんか。 ヨナタンはそばの若者に叫びました。 「さあ、あとから登って来い。 神様が私たちを助けて、勝利をもたらしてくださるぞ!」 13 二人は手とひざでよじ登りました。 ペリシテ人がしりごみするところを、ヨナタンと若者は右に左に切り倒しました。 14 このとき殺されたのは約二十人で、一くびきの牛が半日で耕す広さの所に死体が散乱しました。…

サムエル記上 15

1 ある日、サムエルがサウルに言いました。 「わしはあなたをイスラエルの王にした。 神様がそうせよとおっしゃったからじゃ。いま確かに、あなたは神様に従っておいでだ。 2 ところで、神様はこう命じておられる。 『アマレク人に罰を下そう。 エジプトから脱出したイスラエル人が領地内を通るのを、拒否したからだ。 3 さあ、攻め上って、アマレク人を一人残らず滅ぼしてしまえ。 男も女も、子供も赤ん坊も、牛も羊も、らくだもろばも徹底的にだ。』」 4 サウルは兵をテライムに集結させました。 兵力は二十万で、それにユダの兵一万が加わりました。 5 そして、アマレク人の町へ行き、谷に陣を敷きました。 6 サウルはケニ人に使者を立て、アマレク人と運命を共にしたくなければ彼らの中から出て行け、と警告しました。 イスラエル人がエジプトから脱出した時、ケニ人は親切にしてくれたからです。 ケニ人はさっそく荷物をまとめ、アマレク人の中から出て行きました。 7 そののちサウルは、ハビラからエジプトの東方、シュルに至る道で、アマレク人を打ち殺しました。 8 王アガグを捕虜にしたほかは、一人残らず殺しました。 9 ところが、サウルとその国民は、羊や牛の最上のもの、子羊のまるまる太ったものを、取り分けておいたのです。 どれもこれも、とても気に入ったからです。 あまり値打のない、つまらないものだけを殺したのです。 10 その時、神様はサムエルに語りかけました。 11 「サウルを王にしたのが残念だ。 二度までもわたしに逆らった。」 サムエルは、そのことばに激しく動揺し、夜通し神様に叫び続けました。 12 翌朝はやく、サウルに会いに出かけようとした時、「サウル王はカルメル山へ行って自分のために記念碑を建て、それからギルガルへ引き返しました」と告げる者がありました。 13 ようやくサムエルが捜しあてると、サウルは上きげんであいさつしてきたのです。 「これは、ようこそ。 ご安心ください。 神様の命令はすべて守りました。」 14 「なに、では、この耳に聞こえてくる、メエメエ、モウモウという鳴き声は、いったい何じゃ。」…