ネヘミヤ記 10

1-8 知事ネヘミヤは誓約書に署名しました。 続いて署名した者の名は、次のとおりです。 ゼデキヤ、セラヤ、アザルヤ、エレミヤ、パシュフル アマルヤ、マルキヤ、ハトシュ、シェバヌヤ、マルク ハリム、メレモテ、オバデヤ、ダニエル、ギネトン バルク、メシュラム、アビヤ、ミヤミン、マアズヤ ビルガイ、シェマヤ以上、祭司 9-13 レビ人では アザヌヤの息子ヨシュア、ヘナダデの息子のビヌイとカデミエル シェバヌヤ、ホディヤ、ケリタ、ペラヤ、ハナン、ミカ レホブ、ハシャブヤ、ザクル、シェレベヤ、シェバヌヤ ホディヤ、バニ、ベニヌ 14-27 政治家では パルオシュ、パハテ・モアブ、エラム、ザト、バニ、ブニ アズガデ、ベバイ、アドニヤ、ビグワイ、アディン アテル、ヒゼキヤ、アズル、ホディヤ、ハシュム ベツァイ、ハリフ、アナトテ、ネバイ、マグピアシュ メシュラム、ヘジル、メシェザブエル、ツァドク、ヤドア ペラテヤ、ハナン、アナヤ、ホセア、ハナヌヤ、ハシュブ ロヘシュ、ピルハ、ショベク、レフム、ハシャブナ マアセヤ、アヒヤ、ハナン、アナン、マルク、ハリム バアナ 28 以上の人々は、全国民を代表して署名したのです。 一般市民も、祭司も、レビ人も、門衛も、聖歌隊員も、神殿奉仕者も、家族も、大人はみな、国内の異教徒と手を切って、神様にお仕えしようと決心していたからです。 29 全員が心からこの誓約に同意し、もしモーセによって示された神様のおきてを破った場合には、進んで神様ののろいを受ける、と宣言したのです。 30 また、娘や息子をユダヤ人以外の者とは結婚させない、とも誓いました。…

ネヘミヤ記 11

1 そのころ、イスラエルの役人階級は、聖都エルサレムに住んでいました。 また、ユダやベニヤミンの市町村に住む人々のうち、十人に一人はくじで選ばれ、エルサレムに移り住むことになっていました。 2 志願してエルサレムに住む人もあり、そういう人たちは称賛されました。 3 エルサレムに転居した地方の役人の名は、次のとおりです。 しかし、大半の指導者、祭司、レビ人、神殿奉仕者、ソロモン臣下の子孫などは、故郷のユダの町々に住んでいました。 4-6 ユダ部族では、 アタヤ彼の家系をさかのぼると、父ウジヤから、ゼカリヤ、アマルヤ、シェファテヤ、マハラルエルと続き、このマハラルエルがペレツの子孫にあたるわけです。 マアセヤ彼の家系をさかのぼると、父バルクから、コル・ホゼ、ハザヤ、アダヤ、エホヤリブ、ゼカリヤと続きます。 ゼカリヤはシェラ人の子孫です。 エルサレムに住んだ、ペレツの子孫にあたる屈強の人々は、四百六十八名にのぼりました。 7-9 ベニヤミン部族では サル彼の家系をさかのぼると、父メシュラムから、ヨエデ、ペダヤ、コラヤ、マアセヤ、イティエル、エシャヤとなります。 ガバイとサライの子孫にあたる人々は、九百二十八名にのぼります。 その指導者はジクリの息子ヨエルで、セヌアの息子ユダが、補佐役を務めました。 10-14 祭司の指導者の中では エホヤリブの息子のエダヤ ヤキン セラヤ彼の家系をさかのぼると、父ヒルキヤから、メシュラム、ツァドク、メラヨテと続きます。 メラヨテは祭司の長アヒトブの息子です。 この人たちのもとで、八百二十二名の祭司が神殿での職務についていました。 また、アダヤの指導下には、二百四十二名の祭司がいました。 アダヤの家系をさかのぼると、父エロハムから、ペラルヤ、アムツィ、ゼカリヤ、パシュフル、マルキヤとなります。 また、アマシュサイの指導下に、百二十八名の屈強の人々がいました。 アマシュサイの家系をさかのぼると、アザルエルから、アフザイ、メシレモテ、イメルとなります。 ザブディエルが彼を補佐しました。 ザブディエルはハゲドリムの息子です。 15-17 レビ人の指導者たちでは シェマヤ彼の家系をさかのぼっていくと、父ハシュブから、アズリカム、ハシャブヤ、ブニとなります。 シャベタイとエホザバデは、神殿の雑務の監督にあたりました。 マタヌヤは祈りによる感謝礼拝を始める役でした。 マタヌヤの父はミカで、その父はザブディ、その父はアサフです。 バクブクヤとアブダが、彼の補佐にあたりました。 アブダの父はシャムアで、その父はガラル、その父はエドトンです。 18 合計二百八十四名のレビ人がエルサレムに住んだことになります。…

ネヘミヤ記 12

1-7 シェアルティエルの息子ゼルバベルやヨシュアといっしょに帰還した祭司の名前は、次のとおりです。 セラヤ、エレミヤ、エズラ、アマルヤ、マルク、ハトシュ シェカヌヤ、レフム、メレモテ、イド、ギネトイ、アビヤ ミヤミン、マアデヤ、ビルガ、シェマヤ、エホヤリブ エダヤ、サル、アモク、ヒルキヤ、エダヤ 8 レビ人では ヨシュア、ビヌイ、カデミエル、シェレベヤ、ユダ、マタヌヤ マタヌヤは礼拝で感謝の歌をうたう責任者でした。 9 同族のバクブクヤとウニは、その向かい側に立って応答歌をうたう役を務めました。 10-11 ヨシュアの家系は、息子エホヤキム以下、エルヤシブ、エホヤダ、ヨナタン、ヤドアと続きます。 12-21 大祭司エホヤキムのもとで仕えた祭司で、各氏族の長の名は、次のとおりです。 セラヤ族の長はメラヤ エレミヤ族の長はハナヌヤ エズラ族の長はメシュラム アマルヤ族の長はヨハナン メリク族の長はヨナタン シェバヌヤ族の長はヨセフ ハリム族の長はアデナ メラヨテ族の長はヘルカイ イド族の長はゼカリヤ ギネトン族の長はメシュラム アビヤ族の長はジクリ ミヌヤミン族とモアデヤ族の長はピルタイ ビルガ族の長はシャムア シェマヤ族の長はヨナタン…

ネヘミヤ記 13

1 その日、モーセのおきてが朗読されましたが、その中に、アモン人やモアブ人は神殿で礼拝してはならない、と書いてあるのを見つけました。 2 というのは、彼らがイスラエルに対して友好的でないばかりか、バラムを雇って、のろいをかけようとまでしたことがあったからです。 しかし神様は、のろいを祝福に変えてくださったのでした。 3 この規定が読み上げられると、直ちに、外国人は一人残らず、集会から追放されました。 4 このことが起こる前の話ですが、神殿の倉庫の管理者で、トビヤと親しかった祭司エルヤシブが、 5 トビヤのために、倉庫を豪華な客間に改造した事件がありました。 その部屋は、以前、穀物のささげ物、香料、器物、穀物や新しいぶどう酒やオリーブ油の十分の一税が、保管されていた所です。 モーセは、これらのささげ物はレビ人や聖歌隊員や門衛に支給する、と定めていました。 このほか、祭司のためのささげ物も保管されていました。 6 ちょうどその時、私はエルサレムにいませんでした。 アルタシャスタ王の第三十二年に、バビロンへ帰っていたのです。 やがて、再び許可を得てエルサレムに戻りました。 7 そして帰着早々、この悪事を知らされたのです。 8 私は非常に憤慨し、トビヤの持ち物をぜんぶ外へ放り出しました。 9 そして、部屋をきよめさせ、神殿の器物、穀物のささげ物、香料を、元どおりそこに戻したのです。 10 私はまた、生活費の支給が打ち切られたため、礼拝の務めをする聖歌隊員ともども、おのおのの農地に引き揚げてしまったレビ人のことも、聞かされました。 11 そこですぐ、指導者たちとじかに会い、「どうして、神殿をそんなにないがしろにするんだ」と談判しました。 とにかく、レビ人をみな呼び戻し、本来の職務につかせたのです。 12 再び、ユダの人々はみな、穀物やぶどう酒やオリーブ油の十分の一のささげ物を、神殿の宝物倉に持って来るようになりました。 13 私は、祭司シェレムヤ、学者ツァドク、レビ人ペダヤに倉庫の管理を任せ、マタヌヤの孫でザクルの息子ハナンを、補佐役にしました。 みな評判のよい人々です。 彼らの仕事は、仲間のレビ人に適正な配給をすることでした。 14 神様、この私の忠実な行ないを心にお留めください。 神殿のためにしたすべてのことを、お忘れにならないでください。 15 ある日、私は畑で、安息日だというのに、ぶどうを絞ったり、麦束を運んだりしている者や、ぶどう酒、ぶどう、いちじく、そのほかの産物をろばに積んで、エルサレムに運び込もうとしている者たちを見つけました。 そこで、公衆の面前でしかりつけたのです。…

エステル記 1

1-3 アハシュエロスは、インドからエチオピヤにまで及ぶ広大なメド・ペルシヤ帝国の皇帝でしたが、その治世の第三年に、シュシャンの王宮で盛大な祝宴がくり広げられました。 皇帝は各地から、総督、随員、将校たちをみな招待しました。 4 お祭り騒ぎは六か月も続き、帝国の富と栄光を誇示する、またとない機会となりました。 5 この期間が終わった時、王は宮廷の門番から閣僚に至るまでをみな招んで、庭園で七日間、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎを楽しんだのです。 6 大理石の柱の銀の輪には、飾りつけの緑、白、青の布が、紫のリボンで結びつけられ、黒、赤、白、黄色の大理石がはめ込まれたモザイク模様の歩道には、金銀の長いすが並べてありました。 7 飲み物は、さまざまなデザインの金の杯に、なみなみとつがれています。すっかり気が大きくなった王は、王室とっておきのワインなども惜しげなくふるまいました。 8 酒を飲むのは全く自由で、むりやり勧められることも、強いて遠慮させられることもありません。 王が役人たちに、皆の好きなようにさせよ、と言い含めておいたからです。 9 同じころ、王妃ワシュティも、王宮の婦人たちを集めてパーティーを開いていました。 10 さて、最後の七日目のことです。 かなり酒のまわった王はつい調子に乗り、王の後宮に仕えるメフマン、ビゼタ、ハルボナ、ビグタ、アバグタ、ゼタル、カルカスら七人の役人を呼びつけ、 11 王妃ワシュティに王冠をかぶらせ、連れて来るようにと命じました。 絶世の美人である彼女の美しさを、並み居る人たちに見せたかったのです。 12 彼らがその旨を伝えたところ、王命にもかかわらず、王妃は言うことを聞こうとしません。 王はかんかんに腹を立てましたが、 13-15 とりあえず、おかかえの法律専門家たちに相談することにしました。 彼らの助言なしには何もできません。 彼らはペルシヤの法律と裁判に通じているばかりか、臨機応変に事を処理できる知恵者でもあり、王は全く信頼しきっていたのです。 その法律専門家というのはカルシェナ、シェタル、アデマタ、タルシシュ、メレス、マルセナ、メムカンの七人で、いずれもメド・ペルシヤの高官でした。 ただ政府の有力者であるだけでなく、王とも個人的に親しくしていました。 王はさっそく意見を求めました。 「今度の件だが、どうしたらいいものかな。 王妃のやつめ、側近を通じ、ちゃんと手続きを踏んで出した命令をはねつけおった! いったい法律では、どのように罰せよと定めておるのか。」 16 メムカンが一同を代表して答えました。 「陛下、王妃は、陛下ばかりか、役人や全国民にまで悪い手本を残しました。 17 と申しますのも、これをいいことに、女どもはだれもかれも王妃のまねをして、夫に逆らうに違いないからです。 18 今晩にも、国中の役人の夫人連中は、われわれ亭主族に口答えするに決まっております。 そうなれば、陛下、領地内はくまなく軽べつや怒りであふれ返りますぞ。 19…

エステル記 2

1 憤りがおさまると、アハシュエロス王は、今さらながら、ワシュティに会えないのが寂しくてたまりません。 2 見かねた王の側近がこう勧めました。 「おこころが晴れますよう、国中から特に美しい娘を探してまいりましょう。 3 各州に、このための役人を任命し、後宮にふさわしい若く美しい娘を選ばせるのです。 後宮の監督官ヘガイには、化粧品などを取りそろえる役目を仰せつけください。 4 そうして、最もお気に召しました娘を、ワシュティ様の代わりに王妃にお迎えになってはと存じます。」 この提案に王が有頂天になったことは、言うまでもありません。さっそく実行に移しました。 5 さて、王宮に一人のユダヤ人がいました。 ベニヤミン部族の出身で名をモルデカイといい、ヤイルの息子でした。 ヤイルの父はシムイ、シムイの父はキシュです。 6 彼は、エルサレムがバビロンのネブカデネザル王の手に落ちた時に捕らえられ、ユダのエコヌヤ王をはじめ多くの人々とともに、バビロンへ送られたのでした。 7 このモルデカイは、ハダサ、またの名をエステルという若く美しい娘を育てていました。 実際はいとこに当たるのですが、年もずいぶん離れていたことでもあり、両親が亡くなったあと、手もとに引き取ったのです。 8 さて、王のお布令が出ると、エステルもほかの大ぜいの娘とともに、シュシャンの王宮内の後宮に連れて来られました。 9 ところが、後宮を管理していたヘガイが、特にエステルを気に入り、彼女のためには何でもしてくれるのでした。 特別の食事や化粧用の品々など、何かにつけて便宜をはかってくれます。 わざわざ王宮の侍女を七人呼んで身の回りの世話をさせるやら、後宮一の部屋をあてがうやら、それはもう大そうなものでした。 10 エステルは自分がユダヤ人であることを、だれにも黙っていました。 モルデカイに堅く口止めされていたからです。 11 モルデカイは毎日、後宮の庭に来てエステルの安否を尋ね、これから先の成り行きを見届けようとしていました。 12-14 選ばれた娘たちについては、こういう取り決めがありました。王の寝所に召される前に、没薬の油で六か月、ついで特製の香水と香油で六か月、それぞれ美しさにみがきをかける期間が約束されていたのです。 それも終わり、いざ王のもとへ召される時がくると、精いっぱい美しくよそおうため、衣装でも宝石でも願いどおりの物が与えられます。 こうして夕刻、王の部屋へ行き、翌朝には、王の奥方たちの住む別の後宮へ移るのです。 そこではまた、シャアシュガズという別の役人の管理のもとで、一生を送ることになります。 そこにいる婦人は、特別王に気に入られ、指名されないかぎり、二度と王のそばへ行くことはできません。 15 さて、いよいよエステルが王のもとへ行く番になりました。 彼女は、例のヘガイに見立ててもらった衣装を身につけました。 その姿の美しさには、ほかの娘たちもいっせいに歓声をあげるほどでした。 16 こうしてエステルは、王の治世の第七年の一月に召し入れられたのです。 17…

エステル記 3

1 その後まもなくして、王は、アガグ人ハメダタの子ハマンを総理大臣に抜擢しました。 今やハマンは、国王に次ぐ実力者です。 2 彼に出会うと、王の家臣はみな、うやうやしく頭を下げます。 そうするようにとの王の命令だったのです。 ところがモルデカイだけは、絶対に頭を下げようとしませんでした。 3-4 周囲からは、くる日もくる日も、「どうして王の言いつけに背くんだ」と責め立てられます。 それでも彼は、頑として聞こうとしません。 そこでついに人々は、モルデカイだけに勝手なまねをさせてなるものかと、ハマンに密告したのです。 モルデカイが、自分はユダヤ人だから別だ、と主張していたからです。 5-6 ハマンはかんかんに腹を立てましたが、モルデカイ一人に手を下すだけではおもしろくありません。 いい機会だから、このさい国中のユダヤ人を皆殺しにしてやろうと考えました。 7 計画を決行する日は、さいころで決めることにしました。 アハシュエロス王の治世の第十二年の四月のことです。 その結果、決行の日は翌年の二月と決まりました。 8 こうしてハマンは、王にうかがいを立てました。 「この帝国のどの州にもくまなく入り込んでいる、ある民族をご存じでしょうか」と、彼は切り出しました。 「彼らの法律と申しますのが、どの国のものとも違っておりまして、そのために陛下の命令に従おうともいたしません。 この上やつらを生かしておいては、陛下のおためになりません。 9 もしよろしければ、やつらを皆殺しにせよとの勅令を、出していただけませんか。 必要な費用につきましては、私が六十億円を国庫に納めさせていただきますので。」 10 王は同意し、考えの変わらぬしるしにと、指輪をはずしてハマンに渡しました。 11 「金の心配はいらんぞ。 さあ、とにかくおまえの考えどおりにやってくれ。」 12 二、三週間後、ハマンは王の書記官を呼び集め、国中の総督や役人あてに手紙を書かせました。 州ごとに、それぞれの言語や方言で書くのです。 一通ごとにアハシュエロス王の署名があり、王の指輪の印が押されます。 13 手紙は急使を立て、全州に送り届けました。手紙の内容は、ユダヤ人は老若男女を問わず、翌年の二月二十八日を期して皆殺しにすべきこと、なお彼らの財産は、手を下した者が取ってよいことなどでした。 14 そのあとに、「この勅令の写しをとり、各州の法令として公示し、全国民に通達すべきこと。 各人は、決行当日のため準備をしておくこと」と書き添えてありました。 15 勅令はまずシュシャンの都で発令されたのち、至急便で各地方へ送られました。 都が騒然とし始めたころ、王とハマンは酒をくみ交わし、悦に入っていました。

エステル記 4

1 事のいきさつを知ったモルデカイは、あまりのことに着物を裂き、荒布をまとい、灰をかぶって嘆き悲しみました。 それから、大声で泣きながら町へ出て行ったのです。 2 彼は城門の外に立ちました。喪服を着たままで入ることは、だれひとり許されていなかったからです。 3 どの州でも、ユダヤ人の間ではすさまじい嘆きの声が起こりました。 王の勅令を聞いて生きる望みを失い、断食して泣き、大部分が荒布をまとっては、灰の上に座り込みました。 4 モルデカイの様子は、侍女や後宮の役人の口を通して、エステルの耳にも達しました。 彼女は心配で居ても立ってもいられず、着物を送って、荒布を脱ぐようにと伝えましたが、彼は受け取ろうとはしません。 5 そこで、自分に仕えてくれる役人ハタクを呼び寄せ、モルデカイのもとへ行き、なぜそんな振る舞いをするのか聞きただしてほしい、と命じたのです。 6 ハタクは町の広場に出て、城門のそばにいるモルデカイを見つけました。 7 モルデカイの話から、いっさいの事情がはっきりしました。 ハマンが、ユダヤ人を殺すためには六十億円を国庫に納めてもよい、とまで言ったというのです。 8 モルデカイは、ユダヤ人殺しを命じる勅令の写しを渡し、エステルに見せてくれと頼みました。 そして、エステルみずから王の前に出て、同胞のために命乞いするようにとことづけたのです。 9 ハタクはそのとおりエステルに伝えました。 10 エステルは困りました。 どうしたらよいのでしょう。 そこでもう一度、ハタクをモルデカイのもとへやりました。 11 「この国では、お呼びもないのに王宮の内庭に入ったりすれば、男でも女でも即刻打ち首なのです。 陛下が金の笏を伸べてくだされば別ですけれど……。 それにもう一月も、陛下は私を召してくださいません。」 12 ハタクはエステルの苦しい心中を告げました。 13 しかし、モルデカイの答えはきびしいものでした。 「ユダヤ人がぜんぶ殺されるというのに、王宮にいるからといって、おまえだけが助かるとでも思うのか。 14 もしも、この事態をおまえが手をこまぬいて見ているなら、神様は別の人を用いてユダヤ人をお救いになるだろう。 だがいいか、おまえと一族だけは滅びると覚悟しておけ。神様がおまえを王妃となさったのは、ひょっとして、この時のためかもしれないのだぞ。」 15 折り返し、エステルからの返事が届きました。…

エステル記 5

1 こうして三日後、エステルは王妃の服装をし、王宮の内庭に足を踏み入れました。 その向こうに謁見の間が続き、王は王座にすわっていました。 2 ふと見ると、王妃エステルが内庭に立っています。王は、「よく来た」と言わんばかりに、金の笏を差し伸べました。 そこでエステルは進み出て、笏の先にさわりました。 3 「どうした、エステル。 何か願い事でもあるのか。 申してみい。 たとい帝国の半分でもな、おまえにならやるぞ!」 4 「もし陛下さえおよろしければ、きょう陛下のために宴を催したいと存じます。 どうかハマン様とごいっしょにお越しくださいませ。」 エステルは、かしこまって答えました。 5 それを聞いて王は側近を振り返り、「ハマンに、急いで来るよう申せ!」と命じました。 こうして王とハマンは、エステルの宴会に来ることになったのです。 6 酒がふるまわれる時になって、王はエステルに尋ねました。 「さあ、どうしてほしいのか申すがよい。 たとい国の半分でもやるぞ!」 7-8 「お願いでございます、陛下。 もし陛下が私を愛し、おこころにかけてくださいますなら、どうかあすも、ハマン様を連れてお越しくださいませ。 あすの夜、何もかも申し上げたいと存じます。」 9 宴会のあと、ハマンは天にものぼる思いでした。 ところが、門のそばまで来ると、またあの無礼なモルデカイがいます。 例によって、彼を見ても立とうともしません。 全くしゃくにさわります。 10 しかし、ここで腹を立てては元も子もありません。 はやる気持ちを抑えて家に戻り、友人や妻ゼレシュを呼び集めました。 11 自慢話をしようというのです。 自分が財産家であること、子宝に恵まれていること、異例の昇進をしたこと、この国で王に次ぐ権力を握っているのは自分であることなど、得々と語り始めました。 12 話にあぶらが乗ってきたところで、さも取っておきの話だとばかりに大得意で続けました。 「実はな、エステル王妃のパーティーに招かれたのは、陛下とわしの二人だけだったのさ。 そればかりか、あすもまた、陛下と二人でご招待を受けてな。 13 だが、それにしてもだ……」と、彼は急に口ごもりました。 「小憎らしいのは、あのユダヤ人のモルデカイのやつさ。 城門の前に座り込みやがって、わしを見ても知らん顔をしておる。 全くあいつのおかげで、せっかくの喜びも吹っ飛んでしまうわ!」 14 すると、ゼレシュや友人たちは、口をそろえて言いました。「だったら、こうすればいいでしょう。 うんと高い絞首台を作るんですよ。 二十五メートルもあるのを。 あすの朝にも、陛下に願い出て、モルデカイをつるしてやりなさい。 さっぱりした気分で、陛下と宴会においでになれますよ。」 なんとうまい考えでしょう。 ハマンは大いに乗り気になって、すぐさま絞首台を作らせました。

エステル記 6

1-2 さてその夜のこと、王はどうしても寝つかれません。 しばらく読書でもしようかと、書庫から王国の記録文書を持って来させました。読み進むうち、ある項目に目が行きました。 門の警備に当たっていた役人ビグタンとテレシュが企てた、王の暗殺未遂事件のところです。計画が未然に防げたのはモルデカイの手柄だとあります。 3 王はそばにいた者に尋ねました。 「このモルデカイに何かほうびを取らせたかな。」 「何も取らせてはおりません。」 4 「だれか外庭で勤務についている者はおらんか。」 王がこう言った時、例の絞首台にモルデカイをつるす許可を得ようと、ハマンが城の外庭にさしかかったところでした。 5 そこで家来は答えました。 「ハマン様がお見えです。」 「ちょうどよい。 ここへ呼べ。」 6 ハマンが来ると、王はさっそく話を切り出しました。 「余の眼鏡にかなった者には、どんな栄誉を与えたらよいものかな。」 ハマンは心のうちで思いました。 「きっと私のことだぞ。 私以外に、陛下が栄誉を与えたいと思う者などいるはずがないからな。」 7-8 そこで、わくわくしながら意見を述べました。 「陛下ご着用の王衣、それにご愛馬と王冠をおとりそろえください。 9 そして、最も身分の高い貴族の一人にその人の世話をさせてください。 つまり陛下の服を着せ、ご愛馬に乗せ、くつわを取らせて通りを引いて行かせるのでございます。 その時、『陛下のおこころにかない、このような栄誉を賜わったのだ!』とふれさせてはいかがでしょう。」 10 「名案じゃ!」 王は思わずひざを打ちました。 「大至急、王衣を持って来させ、余の馬を引いて来て、そのとおりにしてくれ。 果報者は宮廷務めのユダヤ人モルデカイだ。 よいな、いま言ったことを、そっくりそのまま実行するのだぞ。」 11 なんということでしょう。 しかしどうにもなりません。 ハマンは王衣をモルデカイに着せ、王の愛馬にまたがらせ、くつわを取って通りを引き歩きながら、「陛下のおこころにかない、このような栄誉を賜わったのだ!」と叫びました。 12 そのあと、モルデカイは勤務に戻りましたが、おさまらないのはハマンです。 何とも言えないみじめな気持ちで家へ逃げ帰りました。 13 これからどうしたものでしょう。 何はさておき、妻のゼレシュや取り巻き連中に、事の次第を話すしかありません。 一同は頭をかかえるばかりです。 「まずいですな。 モルデカイがユダヤ人だと陛下に知れた以上、あいつを亡き者にする計画はおじゃんですよ。 いつまでも目の敵にしていたら、かえって命取りになりますよ。」 14 あれこれ知恵をしぼり、善後策を講じている最中に、王の使いが来て、エステルの設けた宴会へ出向くようせき立てました。