出エジプト記 1

1-4 家族を連れ、ヤコブといっしょにエジプトへ行ったヤコブの息子たちの名前は、次のとおりです。 ルベン、シメオン、レビ、ユダ イッサカル、ゼブルン、ベニヤミン ダン、ナフタリ、ガド、アシェル 5 一行は総勢七十名でした。 ヨセフは皆より先にエジプトへ行っていたので、この数には入りません。 6 やがて、ヨセフも兄弟たちも死に、新しい世代になりました。 7 彼らは子宝に恵まれ、人口は増える一方です。 あまりの急激な増加に、ゴシェンの地はイスラエル人であふれ、一つの国と言ってもいいほどの勢力にふくれ上がりました。 8 やがて、新しい王がエジプトの王座につきました。 ヨセフの子孫に何の義理も感じない王です。 9 王は国民に言いました。 「このままイスラエル人どもを放っておくと危険だ。 あまりに数が多すぎる。 10 なんとか、やつらの力を食い止めなければならん。 戦争にでもなり、やつらが敵方についたら、それこそ大へんだ。 われわれに戦いをいどみ、なんなくこの国から逃げてしまうだろう。」 11 そこで、イスラエル人を奴隷にしてしまおうということになりました。 きびしい監督を立て、重労働につかせるのです。 こうして建てられたのが、倉庫の町ピトムとラメセスです。 12 ところが、いくらこき使い、締めつけをきびしくしても、いっこうに効果はありません。 むしろ、前より激しい勢いで人が増え続けるのです。 エジプト人は警戒して、 13-14 ますますつらい仕事を押しつけました。畑で長時間の重労働をさせたうえに、粘土でれんがを作る激しい仕事もさせる、というぐあいです。 15-16 これほどにしても、まだ効き目がありません。 とうとう王は、シフラとプアというヘブル人(イスラエル人)の助産婦に、ひそかに命じました。 ヘブル人の男の子は生まれたらすぐ殺し、女の子だけを生かしておくようにというのです。 17 ところが、助産婦たちは神様を恐れていたので、王の命令に従わず、男の子も生かしておきました。 18 王は二人を呼びつけ、問い詰めました。 「おまえたちは男の子を生かしておくそうだな。 なぜわしの命令に背いたっ!」 19…

出エジプト記 2

1-2 そのころ、あるヘブル人の若い男女が結婚しました。 二人ともレビ部族の出身でした。 やがて、二人の間に男の子が生まれました。 玉のようにかわいらしい赤ん坊です。 どうして、川へなど投げ込めましょう。 母親は三か月のあいだ家に隠しておきました。 3 もうそれ以上は隠しきれません。 彼女はパピルス製のかごにタールを塗って防水し、赤ん坊を入れると、ナイル川のほとりの葦のしげみに、そっと置きました。 4 その子の姉が遠くから、弟がどうなるのか見守っていました。 5 さて、それから何が起こったでしょう。 王女が、ちょうどそのとき川へ水浴びに来たのです。 侍女たちを従えて岸を歩いていると、葦の間に小さなかごがあります。 何だろうと思って侍女をやり、それを引いて来させました。 6 開けてみて驚きました。 中で赤ん坊が泣いているではありませんか。 「まあ、かわいそうに! きっとヘブル人の赤ちゃんだわ。」 王女は思わず叫びました。 7 それを見ていた姉が、この時とばかり王女のそばへ駆け寄りました。 「王女様、その赤ちゃん、お育てになりますか? だったら、お乳をあげる女がいりますよね。 だれかヘブル人の女の人を捜して来ましょうか?」 8 「よく気のつく子だね。 そうしておくれ。」 王女の返事を聞いて、少女はうれしくてたまりません。 家へ飛んで帰り、母親を呼んで来ました。 9 「お礼は十分しますから、この子を連れて行って、私の子として育ててください。」 王女は子供の実の母親とも知らず頼みました。 もう何の遠慮もいりません。 彼女は子供を抱いて家へ帰りました。 10 やがて、その子は大きくなり、養子として正式に、王女のやしきへ引き取られました。 王女は彼をモーセ〔「引き出す」の意〕と名づけました。 水の中から引き出した子供だからです。 11 それから何年かたちました。 モーセはりっぱに成長し、一人前の大人になっていました。 ある日、彼は同胞のヘブル人を訪ねようと外出したのです。 ところが、目にしたのは、あまりにもひどい有様でした。 初めて同胞の苦しみを知ったモーセの血は騒ぎました。 ちょうどその時、エジプト人がヘブル人を地べたになぐり倒しているところへ、出くわしたのです。 自分と同じヘブル人がやられている。 そう思うと見過ごせません。 12 急いであたりを見回し、だれも見ていないのを確かめると、そのエジプト人を殺し、死体を砂の中に隠しました。 13 次の日もまた、ヘブル人を訪ねましたが、今度はヘブル人同士でけんかしています。 「同じヘブル人なのに仲間をなぐるとは、いったいどういうつもりだ。」 モーセは悪いほうの男を責めました。 14 男も負けてはいません。 「ふん、いらぬおせっかいよ。 だいたい、そういうおまえこそ何者だい。 まるで王様か裁判官みたいな口をきくじゃないか。 きのうのエジプト人だけじゃ足りず、おれまで殺そうってのかい。」 あんなに用心したのに、きのうの事がばれているのです。 モーセは非常に不安になりました。 15 そして心配したとおり、エジプト人殺害の話は、王の耳にも達したのです。 王は、「直ちにモーセを逮捕し、処刑せよ」と命じました。 絶体絶命です。 モーセはミデヤン(アラビヤ半島の北西部、アカバ湾沿岸)の地へ逃げることにしました。 こうして、とある井戸のかたわらに座っていると、 16 ミデヤンの祭司の娘が七人、水くみにやって来ました。父親の羊の群れに飲ませるのです。 ところが、いよいよ水おけに水をくみ始めると、…

出エジプト記 3

1 ある日モーセは、ミデヤンの祭司、しゅうとイテロ〔別名レウエル〕の羊の群れを番していました。 砂漠のはずれにある神の山ホレブ(シナイ山)に近い所です。 2 突然、柴の燃える炎の中に、神様の使いが現われました。 よく見ると、柴には火がついているのに、いつまでも燃えています。 3-4 「いったい、どういうことだろう。」 不思議に思いながら、そばへ近寄りました。 その時です。 神様が呼びかけました。 「モーセ、モーセ!」 「は、はい。 どなたでしょう。」 5 「それ以上近寄るな! くつを脱げ。 おまえが立っている所は聖なる地だ。 6 わたしはおまえの先祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神だ。」 モーセはあわてて顔をおおいました。 神様を見るなど、とても恐れ多いことです。 7 神様は続けました。 「わたしの国民が、エジプトで非常な苦しみをなめているのを見た。 無慈悲な監督のむちを取りのけてほしい、と叫んでいるのを聞いた。 8 彼らをエジプト人の手から救い出そうと思う。 エジプトから助け出し、『乳と蜜の流れる』国、広々とした美しい国へ連れて行こう。 今、カナン人、ヘテ人、エモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人が住んでいる地だ。 9 今こそイスラエル人の嘆きがよくわかった。 つらい仕事に明け暮れ、エジプト人にこき使われている。 10 そこで、おまえをエジプト王のもとへ遣わそうと思う。 わたしの国民をエジプトから助け出すのだ。 王にそう言ってやれ。」 11 「そんな大それた仕事など、とても私には。」 モーセは思わず叫びました。 12 「心配するな。 わたしがついている。 おまえを遣わしたのがわたしだという証拠に、必ずおまえといっしょにいよう。 人々を無事エジプトから助け出したら、この山の上で、神を礼拝しなければならない。」 13 「ですが神様、イスラエル人のところへ行って、先祖の神様に遣わされて来たと言ったら、きっとこう聞かれます。 『なに、先祖の神様だと? いったい何という名の神様だ。』 その時どう説明したらよいのでしょう。」 14 「わたしは『生ける神、創造者』だ。 『「わたしはある」(イスラエルの神の名、主のもともとの意味)という方に遣わされた』と言えばよい。 15 そうだ、『あなたがたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブの神、主が私を遣わした』と言いなさい。 これが永遠に変わらないわたしの名だ。」…

出エジプト記 4

1 しかし、モーセは反論しました。 「あの人たちは私を信じてくれないでしょう。 私の言うことなんか聞くはずがありません。『神様がおまえに現われたって? うそもたいがいにしろ』と言うに決まっています。」 2 「いま手にしているのは何かね。」 「羊飼いの杖です。」 3 「地面に投げてみなさい。」 そう言われて杖を投げると、どうでしょう。 たちまち蛇に変わったではありませんか。 モーセはびっくりして、あとずさりしました。 4 すかさず神様が命じます。 「しっぽをつかまえろ。」 言われたとおりにすると、蛇は手の中で、また杖に戻るのでした。 5 「みなの前で、今と同じことをして見せるのだ。 そうすれば、おまえを信じるだろう。 そして、先祖アブラハム、イサク、ヤコブの神が、ほんとうにおまえに現われた、と納得するだろう。 6 今度は手をふところへ入れなさい。」 また言われたとおりにして手を出すと、なんとらい病にかかり、雪のように白くなっているのです。 7 「もう一度ふところへ入れなさい。」 そうすると、不思議なことに、らい病はすっかり治っていました。 8 「たとい最初の奇蹟を信じなくても、二番目の奇蹟は信じるだろう。 9 それでもまだ信じなかったら、ナイル川の水をくんで地面に注ぎなさい。 水は血に変わるだろう。」 10 しかし、モーセはなおも食いさがりました。 「神様、私はとても口べたです。 うまく話ができたためしがありません。 こうしてお話ししていても、思うように物が言えません。 すぐどもってしまうのです。」 11 「人間の口を造るのはだれかね。 神であるわたしではないか。 人が話せたり話せなかったり、目が見えたり見えなかったり、耳が聞こえたり聞こえなかったりするのは、だれの力によることだ? 12 さあ、ぐずぐず言わず、わたしの言うとおりにしなさい。 ちゃんと話せるように助けてやるし、何を話すかも教えよう。」 13 それでも、モーセは渋っています。 「神様お願いです。 だれかほかの人をやってください。」 14 神様はとうとう腹を立てました。 「もうよい。 おまえの兄アロンは話すのがじょうずだ。 ちょうど今、おまえを捜しに来る。おまえを見つけたら大喜びするだろう。 15…

出エジプト記 5

1 長老たちとの話がすむと、二人は王に会いに行きました。 「私どもはイスラエルの神、主のお告げを持ってまいりました。 『わたしの国民を行かせよ。 荒野で聖なる祝宴を張り、わたしを礼拝させるのだ』とのことです。」 2 「ふん、そうか。 だがな、どうしてこのわしが、主とやらの言うことを聞いて、イスラエル人どもを行かせなければならんのだ。 だいたい主とは何者だ。 聞いたこともないぞ。 いちいち、そんなお告げなどに取り合っておれん。 イスラエル人どもは絶対に行かせん。」 王はきげんをそこねたようです。 3 しかし、アロンとモーセも引き下がってはいません。 「ヘブル人の神様が私どもに現われたのです。 私どもは荒野を三日行った所で、主にいけにえをささげなければなりません。 もし神様に従わなければ、病気で死ぬか、さもなくば剣で殺されるかです。」 4-5 「ええい、いいかげんにしろっ! 自分を何様だと思っているのだ。 イスラエル人どもは、それでなくとも仕事が山ほどある。 その仕事を放り出させるつもりか。 余計なことに口出しするな。」 王はどなりつけました。 6 その日、王は腹立ちまぎれに、イスラエル人を使う監督と配下の人夫がしらたちに、命令を出しました。 7-8 「以後れんが作り用のわらを与えてはならん。 しかも生産割り当ては一個たりとも減らすな。 荒野へ行って自分たちの神にいけにえをささげたい、などとぬかすのは、暇をもて余しているからだ。 9 どんどん仕事をさせろ。 へとへとになるまでこき使え。 モーセやアロンのうそっぱちなどを聞いていると、どんな目に会うか、思い知らせてやるのだ。」 10-11 監督と人夫がしらは、さっそく全員に伝えました。 「王様の命令によって、これからはわらを渡さないことになった。 自分で捜せ。 ただし、れんがは前と同じだけ作るのだぞ。」 12 たいへんなことになりました。 人々はあちこちに出かけて行って、必死でわらを集めるのでした。 13 それでも、監督は容赦しません。 「一日分の仕事は前と同じにちゃんとやれ。 言いわけは許さんぞ」ときびしく要求します。 14 そして、イスラエル人の人夫がしらに、むちを振うのでした。 「きのうの割り当て分をちゃんと作らなかったな。 きょうも数が足りん。 怠け者めが。 命令どおりせっせと働け。」 とても無理なことをわめき散らすのです。 15 人夫がしらたちは思いあまって、王のところへ嘆願に行きました。「陛下、お願いでございます。 こんなひどい仕打ちは、もうやめさせてください。 16 わら一本もらわず、前と同じ数のれんがを作るのは、無理な相談です。 私どもが悪いわけでもないのに、しょっちゅう打たれるのでは、かないません。 だいたい、こんな理屈に合わない仕事をさせる監督が悪いのでございます。」 17 ところが、王は取り合いません。 「いいや、おまえたちは暇すぎるのだ。 そうでなければ、『主にいけにえをささげに行かせてほしい』などとぬかすはずがない。 18 さあ、とっとと仕事に戻れ。わらは一本も渡さん。 れんがの割り当ても減らさん。 今までどおり、きちんと持って来い。」…

出エジプト記 6

1 「わたしがしようとしていることは、そのうちわかる。 王はどうにもならなくなってから、ようやくわたしの国民を行かせるだろう。 その時には、行くのを許すというより、むしろ、国から追い出さないわけにはいかなくなるのだ。 2-3 わたしはアブラハム、イサク、ヤコブに現われた全能の神、主である。 もっとも、彼らには主という名を教えたことはないが……。 4 わたしは彼らと聖なる契約を結んだ。 彼らと子孫とに、彼らが当時すんでいたカナンの地を与えると約束したのだ。 5 今こそ、イスラエル人がエジプト人の奴隷になってうめき苦しんでいるのが、よくわかった。 そして、昔の約束を思い出した。 6 だから人々に、神が必ず救い出すと言ってやれ。 見てるがいい、わたしは大きな力をふるい、奇蹟を行なう。 彼らの奴隷の鎖を解き放ち、自由にする。 7 彼らは名実ともにわたしの国民となり、わたしは彼らの神となる。 彼らは、エジプトから救い出したのがわたしであることを知る。 8-9 アブラハム、イサク、ヤコブに与えると約束した地に、わたしは彼らを連れて行く。 その地はわたしの国民のものとなる。」 モーセは、神様から聞いたとおり人々に伝えました。 しかし、もうだれも、耳を傾けようとはしません。 彼の言うことを聞いてひどい目に会ったために、すっかり気落ちしていたのです。 10-11 神様はまた、モーセに語りかけました。 「さあもう一度、王のもとへ行き、イスラエル人を行かせるように言いなさい。」 12 しかし、モーセは素直に従えません。 「神様、同胞のイスラエル人でさえ、もう私の言うことを聞こうとしないのです。 まして、王が聞いてくれるはずがありません。 それに第一、私は口べたなんです。」 13 神様はモーセとアロンに、再び命じました。 イスラエルの人々と王にもう一度話し、イスラエル人の出国を要求しなさいというのです。 14 イスラエルの各部族の長は次のとおりです。 イスラエルの長男ルベンの息子 エノク、パル ヘツロン、カルミ 15 シメオン部族の長 エムエル、ヤミン、オハデ ヤキン、ツォハル…

出エジプト記 7

1 それから、神様はモーセに言いました。 「おまえをわたしの使者として、エジプト王のもとへ遣わす。 兄アロンがおまえの代わりに話す。 2 おまえはわたしから聞いたとおりをアロンに話し、それを王に伝えてもらえばよい。 イスラエル人をエジプトから行かせるように要求するのだ。 3 王は簡単には承知しないので、わたしはエジプトで数々の奇蹟を行なう。 4 それでも、王はなかなか言うことを聞かないだろう。 そこで最後に、大きな災いを送って徹底的に打ちのめし、そのあとで、わたしの国民を救い出す。 5 その力を目のあたりにする時、エジプト人は、わたしがほんとうに神であることを思い知るだろう。」 6 モーセとアロンは、神様の命令どおりにしました。 7 王と対決した時、モーセは八十歳、アロンは八十三歳でした。 8 神様はモーセとアロンに言いました。 9 「神から遣わされた証拠に奇蹟を見せろと、王は要求するだろう。 その時、アロンはこの杖を投げるのだ。 あっという間に蛇に変わる。」 10 モーセとアロンは王宮に出かけて行って王と面会し、奇蹟を行ないました。 神様に教えられたとおり、王をはじめ居並ぶお付きの者たちの目の前で、アロンが杖を投げると、たちまち蛇になったのです。 11 王も負けてはいません。 さっそく、魔術を行なう呪術師を呼び寄せました。 彼らも魔法で同じようなことをしました。 12 彼らの杖も蛇になったのです。 しかしその蛇は、アロンの蛇にのまれてしまいました。 13 それでも王は、頑としてモーセの言うことを聞こうとしません。 14 神様が指摘なさったとおりです。 王は強情で、イスラエル人の出国はあくまで許さないだろうと言われたのです。 15 しかし、神様は命じます。 「がっかりしてはいけない。 朝になったら、また王のところへ行きなさい。 王は川へ水浴びに行くから、あの杖、このまえ蛇に変わった杖を持って、岸で待っているのだ。…

出エジプト記 8

1 神様はモーセに命じました。 「もう一度、王のところへ警告に行きなさい。 『主は、「わたしの国民が行ってわたしを礼拝するのを邪魔してはならない。 2 もし行かせないなら、かえるの大群を発生させて国の端から端まで、かえるだらけにする。 3-4 ナイル川には、かえるがあふれ、家の中まで跳び込んで来る。 家中、寝室もベッドも、かえるで足の踏み場もなくなる。 かまどや粉をこねる鉢にまで入り込む。 エジプト中がかえるで埋まるだろう」と言われます。』」 5 そして、こう続けました。 「杖をエジプト中の川や水たまりに向けるよう、アロンに命じなさい。 この国は隅から隅までかえるだらけになる。」 6 アロンが言われたとおりにすると、国中かえるでいっぱいになりました。 7 魔術師たちも手をこまぬいてはいません。 秘術を使って、同じようにかえるを出しました。 8 困り果てた王は、モーセとアロンを呼びつけました。 「かえるを何とかしてくれ。 もうたくさんだ。 おまえたちの神に頼んでくれ。 かえるさえいなくなったら、おまえたちをこの国から出してやろう。 神でも主でも、好きなように拝むがよかろう。」 9 「ありがたいことです。 で? いつ出発できましょう。 その日が決まりしだい、さっそく祈ります。 お望みの時に、かえるは一匹残らず死にます。 ナイル川のかえるは別ですが……。」 10 「よしわかった。 あすにしろ。」 「けっこうです。 おっしゃるとおりにしましょう。 その時、私たちの神、主のような方はほかにいないことが、よくおわかりになるでしょう。 11 川にいるかえるのほかは、みな死にます。」 12 モーセとアロンは王の前を下がりました。 モーセがかえるのことを神様にお願いすると、 13 王に約束したとおりになりました。国中、田舎と言わず町と言わず、家の中までも、かえるの死骸でいっぱいです。 14 あちこちに山と積み上げられた死骸から、吐き気をもよおすような悪臭がぷんぷん臭ってきます。 15 ところが、かえるが死んでしまうと、王はまた強情を張りだしたのです。 約束をやぶって、イスラエル人を行かせないことにしてしまいました。 神様が予告なさったとおりです。 16…

出エジプト記 9

1 神様はまた、モーセに命じました。 「王のところへ戻りなさい。 きっぱりこう言うのだ。 『ヘブル人の神、主が要求する。 神の国民が行っていけにえをささげることを許しなさい。 2 もし拒否したら、 3 恐ろしい伝染病をはやらせよう。 馬やろば、らくだ、羊の群れ、牛の群れなど、家畜は全滅する。 4 ただし、死ぬのはエジプト人の家畜だけだ。 イスラエル人の牛や羊の群れは、何一つ被害を受けない。』」 5 神様は、翌日すぐに伝染病がはやりだすと宣告なさいましたが、 6 実際そのとおりになりました。 明くる朝、エジプト人の家畜は、ばたばた倒れ始めたのです。 しかし、イスラエル人の家畜は病気にさえなりません。 7 王はわざわざ使いをやり、イスラエル人の家畜が一頭も死なないというのは本当かどうか、調べさせました。 そのとおり間違いありません。 それでも、やはり王の気持ちは少しも変わらず、イスラエル人を行かせようとはしませんでした。 8 そこで、神様はモーセとアロンに命じました。 「かまどからすすを取り出し、王の目の前で、モーセがそれを空にまき散らしなさい。 9 それは細かなちりとなってエジプト中に散らばり、人と動物の区別なくどこにでもつき、できもののもととなる。」 10 二人はすすを取って王のところへ行き、目の前で、モーセが空に向かってまきました。 すると、エジプト中の人間と動物につき、できものができるのでした。 11 魔術師たちもできものだらけになり、モーセの前に出られません。 12 しかし、神様は王が強情を張るままにさせたので、王は神様の命令に従おうとはしませんでした。 神様がモーセに予告なさったとおりです。 13 それから、神様はモーセに命じました。 「朝はやく起きて王の前に立ち、こう言いなさい。 『ヘブル人の神、主は次のように言われます。「わたしの国民を行かせ、わたしを礼拝させなさい。 14 今度は、おまえをはじめ、おまえの家来そしてエジプト中の人間が、骨身にこたえるような災害を起こす。 この世界にわたし以外に神がいないことを教えるためだ。 15 これまでも、おまえたちを滅ぼそうと思えば滅ぼせた。…

出エジプト記 10

1 神様はモーセに命じました。 「また王のところへ行って要求しなさい。 しかし承知しないだろう。 わたしがそうさせるのだ。奇蹟をもっとたくさん行なって、わたしの力を見せてやるためだ。 2 わたしがエジプトでどんなすばらしいことをしたか、子供や孫たちに語り伝えなさい。 わたしがどのようにエジプト人を負かし、主であることをおまえたちに示したか、代々語り伝えるのだ。」 3 モーセとアロンはもう一度、王との会見を申し入れました。「ヘブル人の神、主が言われます。 『いつまでおまえは、わたしの言うことに逆らうのだ。 わたしの国民がわたしを礼拝できるよう、行かせなさい。 4-5 もし行かせないなら、明日いなごの大群を送る。 国中がいなごでおおわれ、地面を見ることさえできなくなる。 雹の害をまぬがれた作物も、今度ばかりは助からない。 6 宮殿も役人たちの家も、エジプト中の家という家が、全部いなごだらけになる。 エジプトの歴史上、だれも体験したことのない災害になるだろう。』」 そう言いきると、モーセは胸を張って王の前を下がりました。 7 心配になった宮廷の役人たちは、王に願い出ました。 「私どもを滅ぼすおつもりですか。 それでなくとも、エジプトは雹にやられて、すっかり荒れ果ててしまいました。 もうたくさんです。 どうぞ、連中が行きたいと言うなら、行かせてください。 主とかいう神様でも何でも、好きなように礼拝させてやってください。」 8 モーセとアロンは、王のもとに呼び戻されました。 「おまえたちの言い分はわかった。 出かけて、おまえたちの神、主に仕えるがよかろう。 だが行きたがっているのは、実際のところだれとだれか。」 9 「若い者も年寄りもみなです。 息子、娘、羊や牛の群れも、ぜんぶ連れて行きます。」 モーセが答えました。 「一家をあげて、この聖なる巡礼に参加するのです。」 10 「なんだと? 神かけて、子供たちを連れて行くことは許さん。 おまえたちの計略は見えすいている。 11 全員行くなど、いや決して許さん。 大人の、しかも男だけが出かければすむことだ。 もともとそういう話じゃなかったのか。」 二人は王の前から早々に追い払われました。 12 神様はモーセに命じました。 「手をエジプトの国に差し伸べなさい。 いなごが出て来て国中をおおい、雹の害をまぬがれた物を食い尽くしてしまう。」 13 モーセが杖を上げると、神様はまるまる一昼夜、東風を吹かせました。 やがて朝になり、東風に乗っていなごの大群が押し寄せました。 14 いなごはエジプトを端から端まで埋め尽くしました。 エジプトの歴史上、これほどひどいいなごの害は一度もなかったし、これからも二度とないだろうと思われるほどでした。 15 いなごは地面をおおい尽くし、太陽の光も、その大群にさえぎられて薄暗くなったほどです。 雹の害を免れた作物は全部いなごに食べられてしまいました。 緑の物は何一つ残りません。 エジプト中の木や草が、食い尽くされてしまったのです。 16 あわてたのは王です。 急いで使いをやり、モーセとアロンを呼んで言いました。 「おまえたちの神、主とおまえたちとに悪いことをした。 すまなかった。…